第2話

そんな中、幹事の一人が急に個室から出て行った。

ソレを皮切りに、少し男性陣のテンションが上がる。




もちろん、私の隣の彼だって。


そう言えば、一人、遅れてくるって言ってたっけ。






「今日はね、スペシャルゲストが来るんだ。驚くよー!」





そう言って笑った彼に一瞥をくれた私は、何の反応もしないままグラスに入ったビールを飲みほした。





数分もしないうちに再び幹事が戻って来る。


スペシャルゲストと聞いて、他の女の子たちも色めき立つ。




斜め前に座っている友人……まぁ、ここに私を無理やり連れてきた元凶の紗枝は、


『合コンで遅れてくる男は当たりが多い』


なんてことをわざわざ囁いてくる。





それって他の男が聞いたら微妙でしょ…。


そう思いながら、味気のないサラダだけを口に入れた。










「悪い、遅れた。」





ガラリと開いた扉。


低めの小さな声が部屋中の空気を変える。






紗枝が間抜けな声で、『マジで』と呟き目を見開く。




私は、再び頬杖をついて口の中のトマトを噛み潰した。


あ、このトマトは結構いける。


なんて…思いながら。






「響人、遅いって!」


「わーすげぇ!マジ本物だー!!!」






男性陣が大げさに大きな声を上げ、その後に続く女性陣の高い声。


ゆっくりと視線を上げた私の視界に入って来たのは、大きなサングラスをかけた、

細身ながらもいい体格の男。





深めに被った帽子を脱げば、綺麗な黒髪がフワリと揺れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る