第12話 鏡の中にいる可愛い女の子は「ボク」12
子供を育てるという事を真剣に考える
僕は彼との夫婦生活を大切にする一方で、子供を持って育てるということを真剣に考えるようになりました。それは養子縁組ではなく、戸籍上も自分の本当の子供として育てることが出来る制度があることを知ったからです。
子供にとって僕が実の母親になって戸籍上も実子となることの出来る制度を利用したいと思ったのです。僕は結婚して彼の妻になったので苗字は変わりましたが、子供は僕の実子になります。
兄の妻は私と同じトランスジェンダーなので子供は産めません。だから母に孫を見いせてあげられるには養子を貰う方法しかないのです。
ただ、この制度は行基などでどうしても子供の出来ない夫婦に対する制度なので、元の性を変えて女性になったトランスジェンダーがこの制度を利用するには大きなハードルがありました。
しかも、この制度は子供のいない夫婦を救済するだけではなく、本来は親がどうしても子供を育てられない場合に子供の健全な成長を願って作られた制度で、将来に渡って子供を見守っていける夫婦と言うことが絶対的な条件です。
子供を産んだけれど、どうしても育てることが出来ずに手放す女性に代わって、自分たちの本当の子供として育てることが条件で、引き取った後も定期的に家庭訪問がり、完全に自分の子供として戸籍に入るためには時間がかかるのです。
でも、僕たちはこの制度を使う決心をしました。ただ、僕が女性に性別を変えて結婚したトランスジェンダーだということがネックになり、経済的な条件はクリアしても何度も面接を繰り返し、やっとトライアルの実施にこぎつけました。
物心がつく前に自分の子供として乳児を直ぐに受け入れるのがベストのように思いますが、そのようなケースは少なく、ある程度成長した子供をトライアルとして預け、上手くマッチングするかどうか細かく確かめるということが多いのです。
僕は出来れば生まれて間もない乳児がいいと思っていましたが、実の母親から離され、保護された子供を直ぐには養子に出来ないのは分かります。でも、なるべく乳飲み子から育てたいと思っていました。
勿論、僕は母乳は出ないし、生まれつきの女性ではありません。でも、母親になりたいという気持ちは人一倍強く、夫と子供の三人で暮らしたいと願っていました。
ようやく書類が通り、養子先の夫婦として認められた僕たちの家に新しい家族がやってきました。待ちに待った子供と一緒に暮らせるのです。そして、その子は男の子でした。まだ、戸籍の問題は残っていましたが、僕たちは子供に新しい名前を付けて暮らすようになりました。
定期的に係りの人が様子を見にやってきますが、それ以外はごく自然な家族として暮らしています。そして、僕たちが新しい親と認められ、正式に戸籍に実子として登録される時がやってきました。
そんな僕たちの家に兄の夫婦や母がやって来てお祝いをしてくれました。母は僕が子供を抱いている姿を見て心から安心してくれました。更に兄もお姉ちゃんも始めて見る赤ん坊を嬉しそうな顔で新しい家族として迎えてくれました。
そして、子供を育てながらの楽しい暮らしをしていたある日、いつものように彼がベッドに入ってくると珍しく私の身体を求めました。それまでの子供中心の暮らしから少し余裕が出てきた証拠でした。
彼は私のパジャマを脱がすと私の身体を確かめるように丹念に愛撫します。そんな彼の行動が凄く嬉しくて、私は彼にからだを預けました。私の身体は性的な興奮をするのが久しぶりで、濡れたヴァギナに手が触れると声が漏れてしまいました。
そこで彼が私に「家族がもう一人欲しいね」という言葉を漏らしたのです。「出来ればお前を妊娠させられればいいけれどそれが出来ないのが残念だ」と言いました。
少し悲しい気もちになりましたが、彼が僕のことを気遣ってくれているのが分かり、彼と久しぶりのセックスをしました。夫婦になった当初は毎晩のようにしていましたが、久しぶりにするセックスは身体全体で悦びを感じること出来ました。
僕はその幸せは時間の中で子供の将来のことを考えました。男の子と言うことは僕のように性別を変えて生きていきたいと可能性もあるという事です。実際には血は繋がっていませんが、僕たちのことに気がつき、真実を知った時にどんな顔をするでしょう。
僕は子供には正直に全てを話すつもりでいます。僕はこれまで自分の気持ちのままに生きてきました。身体を女性に変え、戸籍も名前も変えて自分の好きな男性と結婚しました。それが正しいと思って生きてきたのです。それはこれからも変わらないでしょうし、僕は自分の産んだ子供ではないけれど子供の成長を見つめながら母親として生きていくつもりです。
僕は鏡に映った子供を抱いた自分の姿を見て、これが女性の幸せなのだと思いました。
鏡の中にいる可愛い女の子は「ボク」 1 @toshiko1955
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