お月さまにお願い
いさ
第1話
僕の好きな人は、ご主人サマなんです。
僕の名前は大王。こんな名前だけど、れっきとした女のコです。
ご主人は僕を女のコだとは知らない。勝手に男のコだと思い込んで、「大王」なんていう凛々しい名前をつけてくれた。
ちなみに、僕の大好きなご主人は、20才、大学生で一人暮らし。名前はコー。背が高くって…確か170cm後半。体重は70kg位で、すらっとしてる感じかな。でも腹筋は割れ気味だし、ガリガリの痩せじゃない。引き締まった体してるんだよね。手足も長くて、お風呂上がりとかは見とれちゃうくらい。
笑ったトキの口元がかわいくって、僕はご主人が笑いかけてくれると、それだけで一日中幸せでいられちゃうんだ。
「大王が銀だから、俺は赤にしてみた」って言って染めた赤い髪も似合ってるし(ちなみに僕は、銀っていうかグレーだと思う。ご主人が銀っていうから、あえて否定はしないけど)。
そしてご主人は、見た目がカッコイイだけじゃない。僕の頭を撫でてくれる手はすごく優しいし(大きな手がまたイイんだよね)、僕が寂しくってご主人を呼べば、レポートをやっていようが、疲れてて眠かろうが、ちゃんと「どうした?」ってきいてくれる。自分自身はお酒飲まないのに、客人用にちゃんとお酒も買ってあったりするし、終電を逃した人がいれば泊めてあげる。人の相談にも乗ってあげるし、色々な人のことが、しっかり見れてると思う。人間観察能力が高いのかもしれない。そんなこんなで、僕は最高にカッコ良くて、素敵なご主人がだぁいすきなのだ。
でも、毎日一緒に寝ていても、こんなにご主人の事を好きでいても、その横顔をじっと見つめてみても、甘えた声を出しても、ご主人は、僕の気持ちには気付いてはくれない。
そして、僕をその腕で抱きしめてくれても、優しく頭を撫でてくれても、時には軽いキスをくれても、ご主人が僕を恋愛対象として好きになってくれることは、ない。
それが悲しくって、僕は毎晩お月さまを眺めては、ご主人が僕の気持ちに気付いてくれることを、そして僕を女のコとして好きになってくれることを祈り続けてる。
叶わない願いだってコト位、知ってるけどさ。
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