第45話

男たちは何か怒っているように見える。

しかし、青木にとっては、どうでもよかった。

もう考えることさえ億劫だった。

頭痛と目眩と耳鳴りで、考えもまとまらない。・・・考えたって無駄なのだと思った。

今度は自分の額のキノコが異様に気になる。

青木はそわそわしながら、しきりに額に触れた。

ヘラヘラと笑い、まともな返答をしようともしない青木に対し、若い方の男はシビレをきらして怒鳴りつける。

『ああ、どうしてこの男は帽子を脱がないんだ。コイツが帽子さえ脱いでくれれば、もしかしたら何かうまい言葉が出てくるかもしれないのに・・・』

男が貧乏ゆすりを始めたので、光の揺れは一層激しさを増した。

青木は溜め息を吐き、目をつぶるとまた額を撫でた。

地面は何か水気を吸って、ボール紙のように波打って歪み始めていた。男の貧乏ゆすりと、揺れ動く光が、部屋の崩壊を促しているようだ。


『ああ、そうだ、真衣は今、何をしているだろう?

待っている、と言ってくれた。

約束、したんだ。

早く帰らなければ。


この、キノコをとって。

全てを終わらせて。

 

そうだ、中島に聞いてみよう。

どうしたらキノコは取れるんだ?って・・・』

・・・青木の口元に、ふっと笑みがこぼれた。





その時突然、その人の帽子の飾りが牙を向いた気がした・・・

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キノコ(中編・完結) いさ @dream-of-asia

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