第2話 神様にからかわれる

 日本にはお中元やお歳暮といった習慣があります。

 ですがそれをあたりまえのようにやっていたのは、わたしよりだいぶ前の世代の人たち。

 自分には関係ないや、と思っていました。

 ……が。

 あるときお仕事をさせていただいた会社から、お中元が届くようになりました。

(ちなみにうちの職場は副業OKなんです)


「おっ、これが世にいうお中元か! ありがたや……!」 

 喜び勇んで開封したら冷や麦のセット。

 うれしい、後で食べよう! とそれを家に置き、わたしは近所の神社に出かけました。

 実はその日は夏祭りで、町内会の福引き大会も行われていたのです。

「はい、一回ね!」と言われ、ガラガラ(正式名称、新井式抽選器)をまわしたところ……。

 コロンと転がり出たのは参加賞のティッシュを示す、残念な赤い玉……ではなく。

「あたり~!」と景気よくハンドベルを鳴らされて、滅多にこんなことがないわたしは、「うそうそ? いったいなにがもらえるの⁉」と大興奮しました。

 ところが……。

「はい、おめでとう!」と渡されたのは、今しがた家に置いてきたばかりの冷や麦セット。

「へ? ……あ、ありがとうございます」

 こんなことってあるんだなぁと、わたしは半分くらいのうれしさで家路をたどったのでした。


 さらに翌年。

 今度はサラダ油のセットがお中元として贈られてきました。

 そして勘のいい方ならわかっちゃったと思いますが、神社の夏祭りで引き当てたのもサラダ油。

 まあいい。油だってよく使います。ありがたい。


 そしてさらに翌年。

 贈られてきたのはアイスクリーム。

 これは福引きの景品で見たことないぞ!

 絶対にダブらないという確信のもと(そもそも参加賞のティッシュということも大いにあり得るわけですし)、神社に出かけたところ……。

「あたりました~!」

 またもや景気よく鳴らされるハンドベル。

 おおぅ、やったぁ、いったいなにが、

「はい、おめでとう。今年から景品に加わったサーティーワンのアイスクリームチケットだよ!」

 ……う、うそでしょう⁉


 これを知人に話したところ、

「あなた、その神社の神様にからかわれてるんだよ!」

 と爆笑されました。

 あ、そういう考え方もあるのかと、つられて吹き出してしまうわたし。

 翌年からは近所の子どもに福引チケットを譲るようになったため、それ以降、わたしが神様にからかわれることはなくなりましたとさ。

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