海に救われた

ジャイキンマン

第一話 海への逃避行と虹色の魚

「死は救いだ」

 中学二年生の頃、僕はそう思った。

 僕は小学校の頃からいじめられていた。

 僕が住んでいる村が小さいこともあり、中学校になった今でもそれは続いている。

 無視されるのも、殴られたりするのも、ものを隠されたりするのにも、もう慣れた。

 だけど慣れたからと言って、辛くないわけが無い。

 普通に皆と遊びたいし話したい。友達も欲しい。

だけど、もう無理なんだ。

 親にいじめられていると言っても

「子供のうちはね、そんなものよ。いじめられていると思っても実際には遊んでるだけだし、あんまり思い詰めなくてもいいんじゃない?」

 など、僕のことが嫌いなのか信じてもらえなかった。

 先生に言ってみても

「クラスのみんなに聞いてみても遊んでるだけだって。だから、もっと楽しい気持ちでいればきっとそんな風に感じなくなるはずよ」

 なんて言われる始末だ。

 そんな時だった。僕の頭の中に「死んだら楽になれるんじゃないか」という言葉が浮かんできたのは。

 その言葉が浮かんでから、僕の頭の中はそれでいっぱいだった。

 一学期が終わり夏休みになった。この夏休み中に僕は自殺することを決意した。

 僕は親が寝静まったことを確認して、午前0時に家から抜け出した。僕は振り返らず、全速力で海へと向かった。

 蝉や蛙の鳴き声、生い茂った雑草がざあざあと風に揺られる音。全てがどうでもよかった。

 何時間走ったのだろうか、もうすっかり夜は深くなっていた。僕は海に着いた。

 僕は靴も靴下も脱いで海に入った。その時には月が空の頂点に達していた。海水は昼に浴びた太陽の温かさをまだ保っている。段々と水深が深くなっていくごとに体が軽く、冷たくなっていった。頭まで海に浸かった時、僕は驚いた。

 海の中はどれもこれも幻想的で、まるでこの村唯一の図書館にある小説で読んだ桃源郷のようだった。

 その中でも、僕はある一匹の魚に目が奪われた。

 その魚は、全身で虹をそのまま吸収したような美しい姿をしていた。泳ぐ姿はまるで、森羅万象全てだけでなく、神様まで魅了するダンスのようだった。

 僕は無我夢中で追いかけようとしたが、体が一向に進まなかった。

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