特攻シルバー ゲーム列伝!

就労Bのマサ

第1話 伝説のジジイ!

 超高齢化社会。

 かつては、老人は、大切にされるものだったが今は、社会のお荷物扱い。ここにもお荷物のジジイがいた。

「恵莉さん、わしのズボンはどこですか?」

 じいさんは、忙しそうな女性に尋ねた。

「おじいさん、今は、忙しいの。タンスのなかを調べてください。」

 じいさんは、うっとおしがられてしぶしぶタンスを探した。しかし、ズボンはない。

「父さん、一番上だよ。」

 息子の昌幸が気を利かせて助け船を出してくれた。

「あったあった。ここかズボンは。」

 昌幸は、父の顔を見て喜んだが、嫁の恵莉は、

「お父さん、お母さんが亡くなったんだから自分でできることは自分でしてください。」

 恵莉も憎くて言っているのでない。子育てと仕事と家事と大変なのに介護までやれは無理なのだ。それは、広俊も理解しているがやはり、歳には勝てない。

「少し、散歩に行ってくるよ。」

 とぼとぼと寂しい背中で玄関に向かっていった。

「恵莉、言いすぎだよ。」

 昌幸は、恵莉に少し、腹をたてていた。

「でもね。お父さんは、まだ、認知症ってわけではないんだからしっかりしてもらわないとすぐに、なにもできなくなるのよ。」

 恵莉は、実の両親が上げ膳据え膳で兄夫婦の家で厄介になり、なにもできなくなり、70前に介護施設に入ってしまった苦い過去がある。だから、厳しいのだ。

「でもねえ、ご両親と親父は違うと思うよ。もう、父さんも70越えたし。」

 昌幸は、すでに老いた父を思ってかばった。

「そうねえ、もう、少し、優しく言うわ。」

 2人は、お互いを再確認して抱き合った。

 その頃、広俊は、とぼとぼ公園の中を歩いていた。

「あー、もう、わしも棺桶に入るだけか…」

 回りを見渡すと枯れた老人しかいない。もはや、わしも消え行くしかないのか。そう思っていると

「誠。お前、ゲーム下手だな。もう少し、強くねえとハブられるぞ。」

 子供たちがゲームのことについて話している。そこには、見たことある子供が。

「僕は、あんまり、ゲーム得意じゃないんだよ。」

 それは、我が孫の誠。近くの小学校に通う10歳だ。その隣にいるのは、ガキ大将か?いじめているのか?

「それは、分かるけど、ゲーム持ってなくて弱いやつは、仲間はずれにされるぞ。だから、もう少し、強くねえと俺も心配するぞ。」

 なんか、いじめているというかいじめられないようにアドバイスしているように聞こえる。

「だって、僕は、トロいし、ゲーム持ってないから練習もできないから。」

 確かに誠は、トロい。いやいや、たんに慎重なだけだ。ゲームは、母親が厳しいからやることすら禁止している。そのお陰か誠は、通信簿は、体育と図工、音楽以外は、オール5だ。だが、他は、2…。もやしっ子と言うべきか?もう少し、男らしくなってほしい。

「お前、頭いいんだから、マップの構成や技の出し方なんて分かってんだからあとは、おもいっきりやれば勝てるのに。」

「でも、勝てないよ。いつも頭で考えているようにボタンが押せないんだ。」

 ゲームは、それが分かっていても反応が追い付かずに負けることが多々ある。車の運転でうまく、駐車ができないことと同じだ。なぜか、なんどもやり直すことが多い。

「まあ、頭いいグループ入ればいいんだけどうちの頭いいグループは、イケズが多いからお前には合わねと思うよ。まあ、母さんにゲーム買ってもらうところから頼んだら?」

「言ってみる…」

 誠は、下を向いてどうせ無理だと思っている。

「剛のいう通りだけどまあ、無理せず、やれば、やるだけが、ゲームじゃないし、僕は、誠くんハブいたりしないから。」

 細身の男の子がフォローしていた。そのとき、

「こーーーらーーーー!」

 元気のいい声が響く。

「こら!剛!龍太郎!誠いじめんな!」

 ギャル風の女の子が2人に詰め寄る。

「いじめてねえよ。というか、うるさい嫁が来た!」

 女の子は、顔を赤めて

「嫁じゃねえよ。風紀係だよ!あんたら、誠は、ゲームなんてしなくてもいいんだよ。」

 この子は、ゲームしないのか?というか、明らかに誠に好意持ってるぞ。

「もう4時だ。誠、お前、塾あるんだろ。早く、行けよ。俺達も帰るから。」

 剛は、うっとおしい嫁から、逃げて行った。

「あーこら!」

 嫁は、おらんだ!だが、なぜか、嬉しそう。そして、いきなり、誠の手を握って

「誠くん、ちゃんと言わないとダメだよ。男の子なんだなら私、強い男の子好きだよ。」

 嫁は、顔を真っ赤にして強く誠の手を握っている。

「愛ちゃん、僕は、いいんだよ。あと、手…痛いよ。」

「え!あ、ごめんね。」

 かなり、強く握っていたのか明らかに誠の手は、赤くなっている。

「ははは!いきなりだったから強く握っちゃた!」

照れながら愛は、内心喜んでいる。

「そうそう、今日、誠君の家に泊まるからね。」

誠は、ええ!と心の中で思った。

「またなの。お母さん、出張?」

「そうなの。今度は、北海道!もう、お土産、生クリーム100%キャラメルじゃないとキレるから。」

 誠は、またかと思いながら

「じゃあ、僕、塾行くから。」

 ああ、やっとうるさいのと離れられると思っていると

「誠くん!一緒にお風呂入ろうね!」

 んんん!という顔を誠と広俊はして

「もう、子供じゃないんだから1人で入ってよ。」

 誠は、顔を真っ赤にして走って塾に向かった。その後ろ姿を見て

「えええ!2年前は、入ってたのに。」

 入ってたんか?広俊は、驚愕した。

「今時の若者は、過激な関係なんじゃな。」

 そんな独り言が出てしまった。そうすると

「誠くんのおじいさん?」

 見つかってしまった。敵に見つからずに数々の武勲をあげてきたわしが!

「おじいさん、ちょっと付き合ってよ。」

 そう言ってわしの手を握ってどこかに向かう。

 広俊は、無事に散歩を終えられるのか?

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