1章②

       ◆  ◆  ◆


「急に呼び出してすまないね。芥川君」

 首領執務室の窓辺に置かれた椅子に腰掛けた鴎外は、隣に立つ青年に話しかけた。

「構いません。ご用件はなんでしょう? 首領」

 芥川と呼ばれた青年。首領直轄の遊撃隊に所属する芥川龍之介だ。

「今朝方、我々の倉庫が何者かに襲撃されたのは知っているね?」

「はい。現在樋口と黒蜥蜴たちに状況を調べさせています」

「さすが芥川君。行動が早くて助かるよ」足を組んだ。「どうやら“組合ギルドの一件”でこちらが弱っていると思い込んだお馬鹿さん達がはしゃいでいるようだ」

『組合の一件』──

 北米の異能力者集団である組合ギルドが行なった『横浜焼却作戦』により、ポートマフィアは直轄構成員十八名、傘下組織を合わせると百名近い死者を出した。

「幸いにも、今回は大きな被害が出ている訳ではない。だが・・・・・・」目つきが変わった。「このまま黙っていることなど、ポートマフィアの掟に反する」

 ポートマフィアには三つの掟が存在する。首領の命令には絶対に従うこと。組織を裏切らないこと。受けた攻撃は必ずそれ以上にして返すこと。この順番はそのまま重要度の順番でもある。

「そこで、だ。芥川君、この件は君に任せる。敵を探し出し、壊滅してきてほしい。そして、ポートマフィアをなみする者が、どれほど苛烈な攻撃で潰されるのか・・・・・・。今一度、思い知らせてあげなさい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る