序章
第1話
臣下の心が欲しい。
軍師が欲しいな。
一途に尽くしてくれる純粋な大人がいい。
東栄国世襲宰相、李劉宝は、軍部名簿を見ながら頷くと下役に二人の軍人を呼ぶように指示した。
呼ばれたのは、強靭な大男と、腰の低い美しい男だった。
「地方城塞城主、憩 一途。その武具持ち、黄 紅焔。国王陛下に同行しこの世界の視察に参れ。国王をお守りするよう、くれぐれも頼むぞ」
は、畏まりました。微力ではありますが必ずや力になれるよう助力いたします、と拝謁すると二人は執務室を出た。
玉露は、劉宝の傍で唸った。
「あの者たち、使えるんですか?どう見ても細い方、腕に自信があるようには…」
「風虎殿の兄上だ、頭の良さは東栄国一だよ、腕もお前程度には使えるから、ほら、お前も早く行きなさい…」
ぽん、と背中を押せば、玉露は兄を振り向いて行ってまいります、と拝謁した。
気を付けて…、と頷くと、一緒に行けない自分は苦笑するしかない。
劉宝は執務室から出ると、霊廟に向かう。
高い天井を見上げて、ただ祈る。
跪くそこは冷たい大理石。
萩様、あの子達の未来に幸を…
この先に何があるのか、分からない。
道中の安否に思いを馳せたらキリが無い。
楽しんできてください、そして元気に帰ってきて欲しい。
望むのはそれだけなのです、と劉宝は目を開けると、庭に出た。
青空の下、城下の世界を一望する。
世界に羽ばたく鳥のようにはいかない。
行けない空は、果てしなく広かった。
本当は自分が同行できたら、とどんなに願ったか…
叶わぬ思いは、皆に託そう。
ここから始まるこの世界の旅へ思いを馳せて……
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