神堕としの魔女

蒼生 縹

prologue 

「■■■■…………」




もう手が届かない人の名を呼ぶ。


哀しくて可笑しくて気が狂いそうだった。現代の人間は、進化が出来る。そして、進化に繋がる感情がある。


 それは人に依り歓喜だったり、憤怒だったりするが、僕の感情は絶望から生まれる嗤いだった様だ。同時に、激しい怒りで気が狂いそうだった。


 僕は本当は解っていた。自分は正義では無いと。そして思っていた。自分は正義の味方に倒される敵役ヴィランじゃないと。



……解っていたよ、解っていたさ。ただ抗いたかっただけ。僕は本当はそんな人間じゃない。



 僕に平穏は似合わない。僕の道は、貴女と違って光に照らされた綺麗な道じゃない。

 だから……道は決まった。




「決めたよ。僕は悪だ、悪で良い。だから僕なりの悪の道を行く。残酷で冷酷な道を往く。お前を神から堕とす。

お前を従えてあげる。」




 僕は嗤いながら言った。


僕は久しぶりにとても開放的な気持ちだった。


 そして枷が、呪いが戻って来た。もう一度、僕の食らってきた鬼達の業を、罪を背負う。また足が重くなる。


 貴女の為に為らば、僕は何処までも堕ちていける。僕は完璧を装う。虚しさを、感情を殺し完璧な笑みで笑う。


 全ては貴女の為に、神に、お前に救済を。

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