第5話突然の別れ

 それからどれくらいの時が流れただろうか。


 晃さんの生まれ変わりを何度も見てきた。

 隣には、恋人がいて、妻となり、子どももいて、幸せそうに暮らしてる。



 自称「神さま」がわたしの前に現れたのは、もう千年もの時を超えたころだったと思う。


「よくあの者の魂を見守り続けたな」

「大好きな人ですから」


 髪が抜けて泣いてたわたしに、笑顔を取り戻してくれた人。


「褒美に、人間に生まれ変わるがいい」

「え?」


 自称「神さま」からの突然の魔法。


 消えていくわたしは、少しずつ記憶が消えていくのがわかる。


 やだよ。消えなくないよ!こんな突然やだよ!


 言葉にならない。

 心の声さえ、なにを言っていたのかすら覚えてない。


 忘れるの?晃さんのこと。忘れてしまうの?


 どうか、あの人のそばに生まれさせて。

 好きになってもらえるように頑張るから。



 その時までお別れだね。

 きっとわたし、あなたを見つけるから。


 大好きな晃さんの記憶、さようなら。


 わたしの手が、どうか、あの人に触れますように。


 願いを込めた時、頬に涙がこぼれた。

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天使の願い @hisae-cony

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