知らず知らずに種を作る人。
くすのきさくら
澄んだ目
「――」
『――まもなく。2番乗り場に――07時2――』
「お待たせしましたー。2番乗り場にー到着の電車はーこの駅を出ますと終点まで途中の駅には止まりません。ご注意ください。列車到着しまーす。黄色い線の内側にお下がりください。危険ですのでお下がりくださーい」
とある主要駅の朝の光景。
通勤通学時間のため駅はかなり混雑しており。
駅のホームは人で溢れている。
列車も次から次へと駅へと滑り込んできている。
そんなホーム上で自動音声のアナウンスに被せるようにマイクを握っているのは1人の駅員さん。
早口でアナウンスを入れていっている。
『○×。○×でござ――』
「――ご乗車。ありがとうございました。○×――○×です。各駅に止まります。普通列車お乗り換えのお客様は下りたホームの正面。1番線でお待ちください。まもなく2番線から列車発車します。扉付近は立ち止まらないでください。車内の一歩奥へとお進みください。まもなくドア閉まります」
駅員さんは1人で1番線と2番線の対応をしているため。常に歩きながら。周りの安全確認をしながら流れるように次々とアナウンスを入れている。
「――各駅に止まります。普通電車はこの列車の後に1番線に参ります。停止中の列車はこの駅を出ますと終点まで途中の駅には止まりません。ご注意ください。まもなく発車し――」
ブゥゥ――。
「2番線。ドア閉まります。ドア閉まります。駆け込み乗車はおやめください。危険ですのでおやめください。ドア閉まりまーす」
駅員さんのこの行動はいつもの光景。
多くの人は駅員さんに注目することはなく列車に乗り込んでいく。
また音楽などを聴いている人は駅員さんの声すら届いていないかもしれない。
「2番線列車動いてます。黄色い線までお下がりください。お下がりください!」
「――」
『まもなく。1番乗り場――』
「続きまして1番線には各駅停車が参ります。黄色い線の内側までお下がりください。
しかし、ずっとしゃべり続ける駅員さんをじっと見つめている小さな瞳があった。
その瞳に映る駅員さんは『かっこいい存在』だ。
1人で多くの人を案内する駅員さんの姿は、小さな瞳の持ち主に小さな光をもたらせたのだった。
了
知らず知らずに種を作る人。 くすのきさくら @yu24meteora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます