第27話 お望み通り、剣の錆にしてやらあ
それを聞いてのっぽの空賊が笑って言い返した。
「ははははっ、魔法ランドが崩壊するわけねえだろう。何、寝言を言ってやがるんだ。なあ、兄弟」
「そうさ、あり得ないことを心配する前に自分の身を案じた方がいいぜ」
「ロボットたちは魔法ランドがただの遊園地だってことを知らねえんだ……」とバルクがボソリと言った。
「な、何…ッ。このおれ様が何も知らねえだと。バカにすんなッ。おれは空の男としてこの魔法ランドのすみからすみまで冒険して来た。お前らの想像もつかねえような広い世界をおれは見てきたんだ」
「小僧たちこそ、何にも知らねえようだから教えてやる。俺たちは仕事をしなきゃならね
えってこと。悪いが……」
そう言って太った空賊は腰の銃を抜こうとした。しかし「あれ?」と不思議そうな顔をした。
「ん? どうした兄弟」
「いや、さ。銃が無いんだよ」と太った空賊は辺りを探した。「ついさっきまであったはずなのに……」
「よく、探せよ。さっき空で戦ったときにはあったろう」
「ああ、あった。なのに今、無いんだ。まるで狐につままれたみたいだ」
「あの波動銃だったら、さっき僕がもらっといたよ」と僕は教えてあげた。
「野郎、いつの間に」
「お前たちが眠っている間に失敬した」
「おれたちが眠っていた! そんなバカな。おれはずっと起きてた。一睡もした覚えはねえ」
「一睡どころか、お前たちは三年間眠っていたんだよ。電源を切られて」とセブは言った。「ロボットは人間に生意気な口をきいてはならない、ロボット四原則を知らないのか」とセブは太った空賊を蹴飛ばした。不意をつかれた空賊は、おっとっとと言いながら、そのまま後ろに転がり、酒樽に頭をぶつけた。その衝撃で頭部がもぎれ、あれ、あれ、と言いながら、コロコロと床を転がっていってしまった。
「あ、兄弟!」それを見てのっぽの空賊が叫んだ。「てめえ、よくもおいらの兄弟をやってくれたな! デブ公の仇をとってやる」とのっぽの空賊は剣の切っ先をセブに向けた。
「さっきの銃もただの波動銃だったんだから、剣も子供のオモチャさ」
そう言ってセブが空賊に立ち向かっていった。
「丸腰の相手に得物を使ってはならねえというのが空賊の掟だが、まあ、誰も見てねえからいいか」と空賊は剣先をビュンビュンとうならせた。「お望み通り、剣の錆にしてやらあ」
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