第4話 パズルが弾き飛ばされるッ
次の日から、放課後になると僕らはこの場所へ通い、作業に没頭した。まず、表面の泥と錆を落とし、ぼろ切れで磨いて、ワックスをかけた。それから、開けられる蓋という蓋はネジを外して開け、内部も手と指の届く限り、磨き、丁寧に油を塗った。目に届く限り、断線や破断、ボルトが緩んでいるところが無いかも調べた。切れたバルブやエンジン・オイルを交換した。
「ジェットじゃないのか」とボディを磨きながらセブががっかりしたように呟いた。
「レシプロでよかったさ。整備用の工具やオイルが手元にある」とパズルが内部に手を突っ込んで中をいじくりながら言った。「それよりも、もうネジをなくすなよ」
「わかってる」
僕らの家には、トラクターがあった。だから納屋にはオイルや燃料、工具などがあった。僕らはそこから必要なものを持ち寄った。
ポッドは整備されていった。
船底の半分はまだ泥に埋まったままだった。僕らは、河原から長い流木を探してきて、それを梃子にして泥から引き揚げておいた。
そして、ついにこの日がやってきた。整備されたポッドを前に、僕らは、バッテリーとケーブルを持ったまましばらく佇んだ。それから、パズルがポッドのドアを開け、乗り込んだ。僕は下から、バッテリーとケーブルをパズルに手渡す。パズルが床のパネルを外して、ポッドのプラグと納屋から持って来たバッテリーのプラグとをケーブルで結ぶ。僕とセブは、その様子を下から眺めていた。作業するパズルの頭がせわしなく動いているのが見える。その上空には、今から僕らが目指す、魔法ランドが中空に掛かっていた。
「エンジンを始動するぞ」準備を整えたパズルが言った。
「オーケー」僕とセブは答えた。
パズルが操縦桿を握り、スターターのスイッチを押した。何度かキュルキュルキュルと音をたててから、ブウンッとエンジンがかかった。灰色の排気ガスが煙突から吹き出すと、周囲の空気がビリビリと振動で震えた。灰色の煙は、やがて、白い煙になり、カラメルのような臭いがした。
「よしッ、エンジンの調子はいいぞ」パズルが言った。
と、パズルがそう言った途端にポッドがゴトッゴトッを音を立てて、壊れた洗濯機みたいに激しく暴れた。僕とセブは、五、六歩かけて退いた。振り返ると、ポッドの上で、パズルが振り落とされないよう、目をつむり、両手を突っ張って、身を支えている。
「パズルが弾き飛ばされるッ」そうセブが叫んだ。
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