深く、浅い物語

coconut

第1話、深そうで浅い物語

思うに、人間とは、果てしない探求の旅を続ける生き物である。


かくいう俺も、その探求の真っ只中にいる。今、コンビニのレジに並びながら、どのカップラーメンが最もコストパフォーマンスに優れているかという命題に挑んでいるのだ。腹は減っているが、同時に財布の中身も寂しい。こういうときこそ、人間の知恵が試される瞬間だ。


「……うーん」


悩みに悩んだ末、俺は98円のしょうゆ味に手を伸ばす。王道にして無難。つまりは、何のひねりもない選択。だが、人間とは時に安全策を選ぶものだ。深遠なる決断力の賜物である。


レジにたどり着くと、バイトの兄ちゃんが俺のラーメンを無感情にスキャンした。彼はきっと、何百、何千というラーメンをスキャンしてきたことだろう。人間とは、日々同じ作業を繰り返しながら、時に意味を見失う生き物なのかもしれない。


「98円です」


俺はうなずきながら財布を取り出し、小銭を探す。しかし、小銭入れにあるのは97円だった。


「……」


一瞬、時が止まった。人間とは、想定外の事態に直面すると脳がフリーズする生き物である。


「あ、すみません、千円で」


仕方なく千円札を渡す。すると、レジの兄ちゃんが何の感慨もなく902円を返してきた。俺はその小銭を受け取りながら、人間とは何なのかを再び考えた。人間は、結局のところ、千円札を出すことで98円のラーメンを買い、902円の釣りを受け取る存在に過ぎないのではないか――。


そう考えた瞬間、俺は一つの真理に到達した。


「……まあ、腹が減ったら何でもいいや」


思うに、人間とは、深く考えたようで、結局どうでもよくなる生き物である。

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