母親は最高の相棒【kac2025】
白鷺雨月
第1話 母親は最高の相棒
エルフのシルビアは戦災孤児を拾った。
人間の世界は長らく帝国と王国が戦争繰り返し、混乱の極致にあった。
このような孤児などそれこそ吐いて捨てるほどいる。
しかし、一時の気まぐれかそれとも長いあいだ一人で生きてきて寂しさをおぼえたからか。
シルビアはそのどちらともだと思い自嘲した。
戦災孤児の名はレオンといった。彼の唯一の持ち物であるおくるみにそう書かれていた。
レオンなんて勇ましい名前ではないかとシルビアは思った。その名前のように強く生きてほしいと彼女は思った。
この世界のエルフは千年生きると言われている。
そしてシルビアは九百年を生きてきた。その長い人生で幾人もの人間と出会い、別れてきた。国の興亡も見てきた。
英雄と呼ばれた男たちが実は生きるのに必死なだけの人間だということを彼女は知っていた。
残りの百年をこのレオンと生きるのも悪くないとシルビアは思った。
「ほらレオン、そんな剣では私を守れないよ」
シルビアは十歳になったレオンに剣術を教えていた。
レオンは剣術を覚えて彼女を守るんだと息巻いていた。
人間の成長は早い。あっという間に言葉を覚えて、生意気なことをいうようになった。
さらに五年が過ぎた。
十五歳のレオンの剣はさらに鋭さを増し、時々ではあるがシルビアが防戦にまわることもある。
これならばと思い、シルビアはレオンと共に冒険に出た。
レオンは竜を退治した冒険者に憧れていた。
子どもらしい夢だ。
それにつきあうのも悪くないと長命なエルフは考えた。
「母さん、支援魔法をお願いします」
レオンは剣を抜き、魔物の群れに突撃する。
冒険者になり、五年が過ぎた。
今ではレオンは一人前以上の剣士だ。
すでに剣術はシルビアの上をいっている。
シルビアは精霊魔法を使い、レオンのサポートにまわるようになっていた。
レオンとシルビアの二人は冒険者界隈でもちょっとした有名人になっていた。
この日もとある寒村の村長の依頼で魔物退治をしていた。
難なく魔物を退治したシルビアとレオンは寒村に戻る。寒村での質素な食事を終えたあと、シルフィはレオンに話した。
「もう一人前だよ。あんたはあんたの好きなことをしな」
そう言いながらシルビアはレオンの頭をなでる。
すでに身長はシルビアよりも高く、がっしりとした体格は簡単に大剣を振り回すぐらいには頑丈だ。
「好きなことをしていいのか、母さん」
レオンはじっとシルビアの端正な顔を見る。
エルフの外見は若い時のままだ。
知らない他人が見たらレオンとシルビアは同世代の様に見える。
「じゃあ、母さん。いやシルビア、俺と結婚してくれ」
思ってもいない返答にシルビアはきょとんとしたは顔になる。
「何、馬鹿なこといっているだい」
呆れた顔をするシルビア。
そのシルフィをレオンは真剣な顔で見つめる。
「俺は母さんの事が大好きだ。だからずっと一緒にいたい」
「それは母親としてかい。女としてかい」
「その両方だ」
レオンの言葉を聞き、シルビアははあっとため息をつく。
「わかったよ。じゃあ約束だ。レオンあんた私より長生きしな」
「約束するよ母さん。俺は母さんより長生きしてみせる」
百年後、英雄王レオンの墓の前でシルビアは一人泣いていた。
「まあ九十まで生きたなら人間としては上出来だよ。私ももうすぐそっちにいくからまっていな」
墓に花を供え、シルビアは何処へともなく消えていった。
母親は最高の相棒【kac2025】 白鷺雨月 @sirasagiugethu
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