【KAC20252】一世一代の、勇気を振り絞っての憧れの人との5分【アイドル】
音雪香林
第1話 私には憧れている女の子がいる。
私には憧れている女の子がいる。
インテリアイドルとして地位を確立しつつある
違う事務所だから難しいかもしれないけど、いつか仲良くなりたいなって思ってた。
私の通う芸能人御用達の高校に転入して来てくれないかなって夢想したり。
なのに……。
「風香ちゃんが引退?! どうして?」
私は情報をくれたマネージャーに問い詰めたけれど「ごめんなさい。他の事務所のことだからね。詳しくは知らないの」と返って来た。
当然と言えば当然だ。
「今すぐってわけじゃないよね? 辞めるまでにまだお仕事の予定残ってるでしょ?」
頷くマネージャーに私は「お願い! 風香ちゃんの出演する番組に私をねじ込んで!」と頼んだ。共演者として遠くから最後に麗しい姿を目に焼き付けたい。
「うちは大手事務所で力があるし、あなたのお願いを叶えようとすればできないこともないけど……対価は?」
「むこう一年休みなしで良いです!」
私が差し出した渾身の対価にマネージャーは「却下」と一刀両断した。
「なんでぇ?」
「休まないと疲労でパフォーマンスが落ちるでしょう。頼まれたとしてもそんなスケジューリングはしないわ」
私が「ぐぬぅううっ」と唸っていると、マネージャーはポンと私の頭を軽く叩き。
「風香ちゃんのマネージャーさんに頼んで、仕事の休憩時間に話せるようにはしてあげられると思うわよ」
私は息を呑んだ。
「で、でも、対価も払えないし、私は風香ちゃんと特別友達ってわけでもなくて、なのにそんなの……いいのかな?」
急にしり込みしだした私に。
「対価はあとできっちり払ってもらいます。それはそれとして、あなた今までお馬鹿キャラで売ってたのに『風香ちゃんみたいになりたいな』って急に勉強しだして、そんなに憧れているのにたまに廊下ですれ違っても挨拶するだけ。どれだけ引っ込み思案なのよ。最後くらい勇気出しなさい。彼女が芸能界から引退したら、もう会えないのよ」
マネージャーの言葉に、今更ながらに「二度と会えない」現実を突きつけられ、決める。
「風香ちゃんと話せるようにしてください。お願いします!」
マネージャーに深く頭を下げると「任せておきなさい」と心強い返事が来た。
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