KAC20252 桜色に染められて…… - 憧れの先輩は変態でした -

久遠 れんり

憧れた世界

「やってっっ…… きたああああぁ」

 某陸上中継のような乗りで、私は空に向かって叫び、周りから注目を浴びる。

 田舎とは違い、駅前に人が沢山居た……


 受験の時は、お父さんに軽トラで送って貰ったのよ。デラックスに乗り換えたために座席が広く快適だった。


 そして、こことは違い、田舎の駅前は何もなかったのよ……

 山と川、古びた駅舎と数台駐められる駐車場。

 そうそれが常識だった。


 私の名前は山田花子…… 嘘です。

 竜泉寺 美桜りゅうせんじ みおと申します。

 昔在ったお寺から付けられた名前だとか。


 こんな名前なので、子供の時から願いを叶えろとか、なにか火を噴けとか色々言われていました。


 まあ、そんな事もあって、理学部へと入学。

 大学案内に、理学部では、自然科学の基礎知識を学び、自然現象の原理や真理を解き明かすことを目的としています。なんて言うことを書かれていたのよね。


 学校の方へてくてくと歩き、途中にあるマンションへ入っていく。

 そうお父さんが、無茶苦茶ビックリした値段。

 月一〇万円もするマンション。

 いや、朝夕食事付きで、セキュリティがしっかりしているところだと、そうなるらしい。



 まあそこへ入った訳だ。

 意外と学校から近く、階で男女が別れているとか。



 そして晴れて、入学。

 そしてキョロキョロ。


「さあ、いらっしゃいいらっしゃい。当サークルは、夏は海、冬はスキーの学生生活を楽しむためのサークルだよ。サークル内のカップル率も高いよ」

 そんなかけ声の背後。

 看板にヤリサーって書いてある。


「ポーカー部だよ。通常は1-3のレートだよ。気合いが入っているから夏にはWorld Series of Poker(WSOP)に出るぞ。必要経費一千万だぁ」

 むっ、無理無理。



 大学って怖い。

 そして奥の広いところでは、運動部などがはしゃいでいた。


 そんな中で、中庭へ入る。

 すると、ひっそりとしたコーナーではお箏が演奏されて、和楽器サークルとか囲碁サークル。文学サークル。茶道に、漫研、映研、ポールダンス研究会などが並んでいた。

「ポールダンス研究会ってなんですか?」

 つい近くに居た人に聞いてみた。


「あれだろ、棒の下をくぐる奴じゃないか?」

「そうだったか? もっとエロかった気がするぞ」

「指パッチン……」

 そうこの時声をかけたのが、先輩達だった。


 声をかけた理由、それは長身でかっこよかったから。

 二人共よぉ、信じられない。


 そしてその奥でスマホを見ていた人、一線を画す佇まい。


 黒髪を無造作に結んでポニーテール。

 結んでいる革紐が格好いい。

 細面で、少し切れ長の目が、垂れた髪の向こうでこちらを見る。


「はうっ」

 その目を見た瞬間、お尻から背中に電気が流れた。


「どうした、大丈夫?」

「大丈夫です」


 私はあわてて、手作りパンフレットを貰って帰った。


 

「どうしたんだあの子?」

 呆然と見送っていると、背後から声が聞こえる。

「ふっ、彼女は縁がある。きっとくるよ。こちら側へ」

 そう言って、深淵 望希ふかぶち のぞむがにっと笑う。


 そう、その日から、彼たちの顔が夢に出る。


 一般講義を受けていても気になる。

 私は、とうとう我慢が出来ずに、彼らの巣へ足を踏み込んでしまう。



「言葉、そして文字には力がある。君だって文章を読んで心を動かされて泣いたことがあるだろう。その究極がルーン文字だ」

「そう、これはゲルマン人がゲルマン諸語の表記に用いた古い文字体系。ラテン文字にやがて取って代わられたが、その力は謎だ」

 そう言って、深く語ってくれる先輩達。


「えーと文学的な何かではなく、文字の力とか言うことでしょうか?」

「そうだ」

「るんるん文字とかって、そんなにすごいんですか?」

 私はこの失言のせいで三時間ほど缶詰にされた。


 古代ヨーロッパの勢力図から、風俗民俗学まで泣きながら覚える羽目に。

 私理系なんですが……


 そして、現れた深淵さま。


 喋る言語は日本語ではなかった。


 宇宙を支配する超弦理論て何?


 そして……

「さあ深淵を覗くから、見せたまえ」

「えっ?」

「パンツを脱いで、その台に上がるのだ……」

 そう言って、格好いい顔が近寄ってくる。

 でも、手が私のスカートの中に……


「いやぁー」

 思いっきり膝蹴りを食らわせたその日……


 だけど、そんな私も二年もすると……

 あこがれの先輩達に染められてしまった。


 そう、もう脳内はビンク一色。

 今の時期なら、さしずめ桜吹雪が舞っている。


「はい、スイッチです。いつでも押してくださいね」

 彼らが見守る中、私は駅前を歩き始める。


 先輩が持っているリモコンスイッチ。


 彼が押せば、私の中で凶悪なおもちゃが暴れ出す。

 いつ押されるのか私はゾクゾクが止まらない。


 そう、これも神秘の一つ。

 解き明かさなければならない……


 人の好奇心と、外的刺激、それは理性を破壊して究極のアガペーを与える。

 そう、不朽の愛……


 そこに、田舎から出て来た、無垢な女の子はもう居なかった。

 それは違うと突っ込まないで、突っ込むなら……

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