千穂の家族④

夜、夫の一平が帰宅しても、美優のことを何も話せずにいた。



 ――私の思い過ごしかもしれない…。



 そう思うと、まだ話すのは早いと思った。

 本音は、そうであって欲しい、のだが。



「お葬式…どうだった?」


 夕飯のあと、二人きりになったリビングで一平が訊いてきた。


「うん……。なんか、今でも信じられない…」


「まだ26歳だもんね……」


 千穂は大輔の死を事故死だとはどうしても思えなかった。

 目を瞑ると、喪服姿の賀上が瞼の裏によみがえる。

 


 ――怖い……。

 


 この胸騒ぎに蓋をして、日常生活には戻れない。


「ねえ、一平さん。お願いがあるんだけど…」


 千穂は週末、もう一度G県へ行きたいと申し出た。

 大輔が亡くなった現場を、この目で見て確かめたいと思ったのだ。



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