メガクリテ1982―あられ美味しかの祭―

gaction9969

ー◆ー△ー

 ええーっ!? 開幕一発目のお題が「ひなまつり」なのかい?


 て、てっきり「切○札はフク○ウ」のように、初手から書き手の心を折りに来るような布陣で参られると思っていたが、これは……どう取ればいいと……いうのだ……っ? いや逆にこの何のひねりも無いお題にて真のKAC耐性を計ろうとしてくる……そ、そうかこれは、ある種の「ふるう策」、なのかも知れない……


 などと、前夜祭時点で要らぬ考察を始めてしまう参加者諸氏に告ぐ――


 ……KACをあしざまにのたまう事、この私が許しませぬぞァッ!!(どの口?


 さて、何故こうまで枕が長いかと申しますと、「ひなまつり」、これは男児にとって年内イベントの中では下位の、十八番目くらいに位置する縁遠いものであるからなのであった……(諸説アリ


 厳然たる女子のイベントであり、幼稚園なんかでも段飾りを出して大々的にお祝いしたりすることもあるわけですが、主役は当然女の子。ひそかに思いを寄せる女先生も女子だけの輪の中ではしゃぎ気味で、男子は何となくないがしろにされ気味の疎外感を味わいながらも、「男なんだから泣くな」「男の子でしょ我慢しなさい」など普段から普通に言われ続けてきた昭和メンタルを幼心にも醸成している世代なので、ケッ女じゃんダッセ、べ、べつに興味があるわけじゃないんだからねッというような何となくの一歩引いた態度にて歌とかいいから早くお菓子食べよーぜーみたいに男児同士でふざけ合い、今日のために気合い入れてきたと思われる前列の女子の編み上げた髪に留められたシャラシャラした飾りをはたいてくるくる回したりして結果シャラシャラがもつれて根元からブチ切れてしまってその子をギャン泣きさせては、過去何があったのかは推し量れないが第二次性徴期も迎えていない幼児に対してさえ清々しいまでの女尊男卑な立ち位置スタンスを貫く灰色ひっつめ髪にメタルフレームの瓶底眼鏡を装着したヒス川副園長に軽く粘りかつよくしなう長大な篠竹と思われるものの先っぽの方に色とりどりの養生テープを巻いてそれによって衝撃を緩和しているつもりなれど重さは増すから先端の加速度は計り知れないところの謎の棒にて遠距離から脳天を打擲されては巻き込まれた手前の男子と共にしばし無言で痛みを逃す作業に没頭させられるものなのです……(諸説アリ


 さて、縁遠いと言いつつも、私の実家には三歳の頃その幼稚園で撮ったひなまつりの写真が今もあったりして、実はその時の記憶というのは写真それによって幾度と無く自分の中で呼び戻し反芻していたのか、現在も自分の頭の中に残っています。見ずとも構図は思い浮かぶのですが、園児十人ほど。部屋奥の結構背の高い棚の上にお雛様お内裏様のご両人を配置、その前に机を組んで三人官女、その両脇を固めるように右大臣左大臣(右大臣は何と兎田ウダくんが担当していたという、奇跡イツァミラコー……)、そして前面に四人しかいない五人囃子と。地味でおとなしい小太りな私は当然、その中の右から二番目辺りで色画用紙で作られた烏帽子のようなものをかぶり、手にしゃもじを持って微妙な微笑みを湛えて坐っているわけです。


 だいたい自分の最古の記憶というのは二歳か三歳頃のものではないでしょうか。それが色鮮やかに、その部屋の広さとか間取り、当時の浮ついた感情なんかもセットに、額に納められたその集合写真と共に封入されているわけですな。なのでイベントというものは面倒くさくて、え?と思うようなコストがかかってもやっておくべきものと思うものなのです……


 とは言え親は大変ですよなぁ……とか思いつつ、ふとディスプレイの奥に目をやると、下の子が保育園の時に作ったと思われる紙コップを二つ重ねて色紙をあしらったお雛様とお内裏様が味のあるいい笑顔でふたり仲良く並んでいるところに目が留まるわけで。


 ひなまつり、やはりなかなか良きものですなぁ……(いいシメ


(終)

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