第12話 面影
「ユーシェン。そなた、恋をしたことがあるか?」
ハオランはユーシェンの大腿に頭を預けながら、尋ねた。その手がのびて、ユーシェンのおろした髪をひとふさ掬った。瞳孔の切れた瞳が見上げてくるのを、ユーシェンは受け止めた。ユーシェンはしばし黙り込み、応えた。
「ありません」
「ふふ。嘘を申すな。オウエンではないだろう?」
ユーシェンは目を伏せた。遠い面影が浮かぶ。きっと娘らしくなったろう、小さな頃の思い出。今頃、兄の元へ嫁いだだろう、可愛い幼馴染。
「私も恋をしている」
「さようにございますか」
リンフォンどのを思っているのだろう。その目は、少し切なげに細められた。「私を見よ」と言われ、じっと見つめる。
「恋の目ざめかたは知っておるか」
「私のような野暮には、わかりかねます」
ユーシェンの答えに、ハオランは笑った。それは、かの花夜会でみた、穏やかで優美な笑みだった。その様に、今の呪われた姿と、かつての姿が重なる。
「私にはわかるぞ、ユーシェン」
「さすがにございますね」
「ふふ」
ユーシェンの手を取り、自身の頬に触れさせる。滑らかな肌は、手にすいついた。
「私と恋をしよう、ユーシェン」
ユーシェンの目が、開かれた。感激ではなく、不可解からだ。ハオランは気にした様子もなく、笑っている。
「恋、にございますか」
「ああ」
そう言って、ユーシェンの頭を引き寄せた。唇がハオランの吐息にぬれる。
「恋をしよう。一生これきりしかないような」
そう言って、さかしまの唇を奪った。
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