それから私は大学へと進学してしまった。


 夢のないタイプの「文系」。


 入学式を迎えた日に、私は敷かれたレールを歩く自分に反吐が出そうだった。



 そんな私の大学生活なぞ、長続きするわけもなく、案の定1年の3月に中退した。


 親は泣いて止めると思っていたが、大学を辞めたいと伝えたときには、「無駄な学費をこれ以上払わなくて済んだ」と冗談交じりに笑っていた。



 ——井上蒼子、私。



 同級生が…、会ってもいない同級生が、就活だなんだと嘆いている中、アルバイトと趣味に明け暮れる日々。


「就活、本当にしないの?」


「…店長までそんなこと言う?」


 アルバイト先であるカラオケ店、空が白んでいくのを横目に、店長とレジでぼんやり。


 私の顔色を伺うように覗きこまれ、バチバチと目が合う。


「いてくれるのは有り難いけど、一応蒼子の人生だからね。気にはなるのよ。」


 急に、就活します!って言われても困るし、と言いながら、店長は各部屋の入室伝票をそれっぽく引き出してはしまった。



「店長が一生養ってくれるんじゃないの?」


「は、なら蒼子には就活してもらわんとだめだわあ。」


 店長はケラケラ笑った。まるで他人事のように。


「その気がないのは分かった。」


「蒼子にその気がないでしょ?」



 大学やめて、敷かれたレールに乗るまいと生き始めた 結果、バイトと、男…?に明け暮れる日々って、どうなんだろう。とは、思うんだ。


「私が就活始めたら養ってくれるの?」


「養うよ、就活してなくても。」


 ——井上直貴、アルバイト先の店長、かつ 多分、彼氏。


 私の3つ上、店長なんか任されちゃってる、"シゴデキ"な男なんだと思う。ま、本当にシゴデキなら、賃金発生している労働中にこんなこと言わないと思いますケド。


 直貴が異動してきてすぐ、苗字が一緒だねって話から、気づいたらまぐわってたわけなんですケド。

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