†episodeⅣ†

湯往暦side

第1話



ある開発者が作ったソフトの中には、実は坊ちゃんたちにすら語らなかったもう一つの重要な秘密が隠されていた。



長年厳重に保管されていたその秘密は、最も複雑で最も残酷な真実。それは知る者ぞ知る国家機密と言っても、もはや過言ではないだろう。



だからこそあの情報収集に長けた類坊が、そこまでの情報にたどり着けなかったのだって、仕方のない話。



まあ、元々たどり着けるとすら思ってはいなかった。



何たってこれは到底彼らだけでは扱え切れる問題ではないのだから。



しかしその事実に、——いや彼らは既に巻き込まれている事にすら気付いていない。



全ては彼女、……桃井瑠璃が元凶だと言ったら坊ちゃんはどんな表情をするのだろうか。



もっと言えば、今の皇帝はどんな決断をし、彼女をどう扱っていくのだろう。



俺は悩んでいた。情報は自分の手の中にある。



この爆弾を生かすも殺すも俺次第だ。



このままなかった事にできれば、誰もこれ以上傷つかないのかもしれない。



俺とて、坊ちゃんを苦しめたいとは微塵も思ってはいないのだから。



だが、この事実寝かせておくだけでは、誰も幸せにはならないのだ。



その内彼女の中で、何かしらの変化が起きれば、いずれ必ず話さなければならない時が訪れるのだと、俺は深いため息を何度も吐き出した。



(……さあ、坊ちゃん。)



俺は最後の一手を駒に託した。もう、後戻りはできないようだーー…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る