3月3日の七夕祭り
氷室凛
第1話
よ〜お。
あーしだ。
つっても誰だかわかんねぇ人の方が多いだろうから、一応自己紹介、もとい作品紹介をしておくぜ。
テメェがいま読んでるこの作品は、「サトルクエスチョン」っつー長編小説の番外編だ。もっとも、本編は「日常の謎系青春学園ミステリー」なんて銘打っているが、これは番外編。
謎なんてひとつもありゃしねぇ。
どこにでもいる女子高生の、どこにでもあるような日常だ。
おっと、つってもあーしは、自分のこの日常を、心の内の感情を、切り売りする気はねーからな。
あたかもあったことのように語っているが、全てなかったことかもしれねーぜ。語りじゃなくて騙ってんのかもしれねーぜ。
……ま、前置きはこのくらいにして。
本題より前置きの方が長いなんて笑えねぇからな。本編より番外編の方が多い小説と同じくらい笑えねぇ。
いい加減、かたろうか。
KAC2025参加作品。
お題は「ひなまつり」。
♦︎♢♦︎
3月3日生まれのあーしは、ひなまつりというものが好きではなかった。
別に誕生日ムードが半減するとか、そういう理由じゃない。クリスマスが誕生日のヤツよりかは大分マシだ。
あーしの名前を聞いて「え、桃花? ひな祭りぴったりじゃん!」とか言われるのも、この低身長のせいで「かわいい〜。ひな祭り似合う〜!」とか言われるのも、嫌っちゃ嫌だが大分慣れた。
つかあたしの名前は檬藻花だからな? そりゃ音にすりゃモモカだが、桃の花じゃねぇからな?
1番許せねぇのはさ。
あの、雛人形とかいうやつ。
お内裏様の隣に並べられて、その下にぞろぞろ家来引き連れて、そんな人形を「女の子のお祭り」だとか言って大喜びで飾り立てて──前時代的じゃね?
「ケッコンが女の幸せ」とか、「いい家に嫁いで裕福に暮らそう」とか、そういうこと言いたいワケ? マジ何時代? 昭和?
──ってことまではさすがに言ってねぇけど、「ひなまつり好きじゃない」とポロっと溢したあーしの言葉に、
「え? そうなの? あたしは好きだけどなぁ」
とレオラは目を丸くした。
「レオラはこういうイベントとか好きだもんな」
「それもあるけどさあ。あたしひなまつりは1番好きなイベントかも。だってさ」
雛壇のてっぺんの人形を片手に1個ずつ持って、レオラ──黎王羅は人懐っこい笑顔を浮かべる。
「あたしが王様で、モカちゃんはお雛様。そしたらさ、離れてても雛壇の上で毎年会える気がしない? なんだか七夕みたい。あたしたちだけの七夕!」
♦︎♢♦︎
さてさて、これにてこの話はこれでお終い。
即興で作った話らしく、オチなんてろくにありゃしねぇ。山も谷もねぇ平野だが、見上げりゃ星が光るしテメェの胸には心がある。
──ってなワケで、⭐︎と♡をよろしくな♪
3月3日の七夕祭り 氷室凛 @166P_himurinn
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