テンペンチー

不労つぴ

テンペンチー

 僕が昼休み、自席で本を読んでいると唐突に後ろから声をかけられた。


「よっ、テンペンチー」


 僕へ声をかけたのは友人のエイトだった。

 エイトとは2年のときにクラスが一緒だったが、現在はクラスは別で3階の端の方のクラスにいた。


「あぁ、エイトか。びっくりさせないでよ。てか、テンペンチーって何?」


 僕は脳内でテンペンチーというワードにサーチをかけるが、1件もヒットしない。


 普段僕が使っているユーザーネームもテンペンチーなどという名前ではないし、心当たりもない。新手のネットミームのようなものなのだろうか。


「廊下に貼ってるから見てこいよ」


 困惑している僕へ、エイトは教室の外を指差す。


 僕は開いていた本に栞を挟んでから閉じ、椅子から立ち上がる。

 教室の扉を開け、廊下に出ると壁一面に各クラスごとに所狭しと掲載されていた。


 何ヶ月か前に書道の授業があった記憶がある。おそらくそのときに作成したものだろう。


 しかし、これのどこにテンペンチーなる意味不明なワードと関連があるのだろうか。

 僕は隣にいるエイトに質問する。


「ねぇ、これのどこがテンペンチー?なのさ」

「お前が作ったやつ見てみろよ」


 僕は自分が書いたであろう作品を探す。


 書道の授業で何を書いていたのか全く思い出せないが、きっとごく普遍的なものだろう。


 そう思いながら、探しているととうとう僕の作品を見つけた。

 そこに書いてあったのは――


 天 変 地 異


 という物騒な四文字だった。


「は?」


 僕は自分の目を疑った。

 だが、これを見ていると確かに自分が書いたなという記憶が蘇ってくる。


 他の作品を見てみると『未来の翼』だったり、『明るい未来』だったり前向きなフレーズが多かった。


 その中に混ざる『天変地異』は場違い甚だしかった。


 何故こんな理由のわからないことをしたのか記憶をたぐるが、全く思い出せない。


 かろうじて思い出せたのは、習字の授業のテーマが割と自由に好きな言葉を選んで良かったというものだった。


 愕然と壁面を見つめる僕に、エイトは僕の肩へポンと手を置き、


「なっ、言っただろう。テンペンチー」


 と言った。


 ちなみに、しばらくエイトからはテンペンチーというあだ名で呼ばれた。

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テンペンチー 不労つぴ @huroutsupi666

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