1-2

「必死……」


それを繰り返し呟いたアタシに龍がゆっくり頷く。


「歩をやめさせようと必死にあの手この手を使ってる」

「……うん」

「でも決して尻尾を出そうとしない」

「…………」

「っつう事は、」


その先は、言われなくても分かった。

分かったからこそアタシの中で…何かが崩れたような気がした。


「俺らに、身近なヤツ」


――なんで夕微と龍はアタシには言って、他のみんなには言わなかったのか。


誰でもいいから『嘘』だと言って。

みんなが"容疑者"だなんて。


みんなの笑顔が浮かんでは闇に溶けて消え失せていく。浮かんでは消えて、浮かんでは、消えて。


最後には……黒く塗り潰されたように、みんなの顔が分からなくなる。


「…っ……」


胸が焼けるように苦しくて。呼吸の仕方とかも分からなくなって。


残ったのは……胸を突き刺すような痛み。


「歩……」


震えだしたアタシの右手にそっと夕微の大きな手が伸びた時…


ブーッ、ブーッ。


夕微のポケットからバイブ音が聞こえてきて。


「…わり」


そう言い残して、夕微は携帯を耳に当てながら屋上を後にした。

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