1-3

「…………」


龍と二人、残された屋上で沈黙が続く。


そんな沈黙が嫌で。

何より……こんな気持ちを紛らわせたくて。


「…あははっ」


無意識にアタシは笑っていた。


「なんか…色んなことがありすぎて、疲れちゃった」

「………」

「だから……今日はもう帰るわ」


龍に言ってるのに龍の顔を見ないで話すアタシは…どんだけ失礼なんだろう。

でも、顔を見たら……みんなみたく黒く塗り潰されそうで……。


「夕微や…みんなに言っといて」


アタシはそのまま逃げるようにその場を去る、つもりだった。


「歩」


その低くはっきりした声に足が立ち止まる。


「………ん?」


そう言うのが精一杯で、振り向くことのないアタシは龍がどんな表情をしてるのかは分からない……けど。


「我慢すんな」


龍にはアタシの表情がまる分かりだったんだね。


「っ………」


途端に何かが弾けたようにポロポロと涙がこぼれる。


「っ…ご…ごめっ…」


必死に止めようと涙を拭うけど、止まるどころかどんどんと溢れ出てくる。


「ん」


そう言う龍はアタシを抱き寄せることも、慰めの言葉をかけることもしなかったけど。

ただ泣きじゃくるアタシの手を何も言わないで握り締めてくれていた。

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