「まあ、“女神”って崇め奉るくらいだから中途半端な気持ちじゃないんだろうけど」

「そもそもどうこうするつもりはねぇよ。今のポジションで満足してる」

「あ、そうなの？」

「当たり前だろう。この俺が見吉さんに相手にされるはずないし、男の俺が友達ポジションだからこそ一緒にいられるってことも分かってる」

「それでもユッキーの隣を勝ち取った柴ケンは負け犬くん達からメッチャ妬まれてるけどね。あっちからしたら柴ケンのポジションは喉から手が出るほど欲しいから」

「あれはアイツ等の距離の詰め方が下手クソなんだよ。初めからガツガツ行ったら誰だってウザいって思うに決まってる」

「あら、経験者は語るのかしら？柴ケンも一部の女子から人気あるもんね、腐が付く女子限定だけど」

「……思い出させんなよ」

「しかもあろうことかユッキーにホモ認定されちゃうとか笑えるんだけど！柴ケンかわいそー！不憫過ぎるー！」

「だから思い出させんなって！」

誰だよ、さっき人の気持ちは笑わないとか言った奴は!?

舌の根も乾かないうちに爆笑してんじゃねぇよ！

「それに、俺だって特別何かしたわけじゃねぇんだよ。課題教えてもらっているうちに何となく…」

「ああ、ユッキーが柴ケンの課題ダメにしちゃったって言うあれね。それで教えてもらってるうちに自然とあたし達のグループに馴染んじゃったってわけか」

「……悪ぃかよ」

「別に悪くないけど、柴ケンってある意味ユッキーの彼氏候補から一番遠いよね」

「は？何で？」

「だってさ、柴ケンの存在ってユッキーの中ではもう友達枠確定じゃん。ユッキーに一番近い異性かもしれないけど、逆にそれが仇になってる気がするんだよね。まあ、柴ケンがユッキーと付き合いたいわけじゃないんだったら気にすることないんだけど」

「……別に、気にしてねぇよ。俺はこのポジションを死守するだけだ」

「あっそ。（強がっちゃって…）」

「何か言ったか？」

「べっつにー」

ニヤニヤと、何か含みのある表情で俺を見るサーヤ。

ムカつくな、その顔。

「あのな、言いたいことがあるなら…」

「お待たせ致しました。海老ドリアとビーフシチューハンバーグになります」

俺の不満はトレーを両手に持った店員の声によって遮られた。

「ナイスタイミング」

「あ、海老ドリアこっちです」

「はい。ご注文は以上でしょうか？」

「以上でーす」

「ごゆっくりどうぞ」

店員はテーブルに伝票を置いて厨房に戻って行く。

「さあ、食べよう食べよう。もうお腹空いちゃったよ」

「勿論サーヤの…」

「はいはい。今日はあたしが誘ったから奢ってあげますよー」

「ドリンクバーは？」

「150円くらい払えよ！いいけどさ！」

「ごちです！」