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「あーあ、もっと早く言ってくれれば良かったのに。そうすれば今の彼氏と別れてサーヤん家に来ても良かったんだけどなー」


「誰がお前の世話になるか、この尻軽女」


「尻軽じゃないよ!恋多き乙女って呼んで!」


「死ね」


「柴ケンひっどーい!女の子にそんなこと言っちゃいけないんだよ!」


「でも本当にどうするつもりなの?行く宛てはあるの?」


「んー……あるにはあるんだけど、そこはちょっと世話になりたくなくて…」


「何々、もしかして女?柴ケンっていつの間に彼女作ってたの?」


「お前と一緒にすんな」


「そう言う話好きだね、サーヤは」


「ただの下ネタ好きだろう」


「言えてる」


「違くて!真面目な話!柴ケンって女の話とか全然しないからもう決まった人がいるのかと思ったの!誓って下ネタ好きじゃありません!」


「キャラなだけだと思うけど」




サーヤの見当違いな妄想に溜息が漏れる。

すると俺が否定しないことを肯定と受け取った見吉さんがとんでもないことを口走った。




「確かに彼女がいるならサーヤの家にはいけないよね」




とんでもない。




「ちっ、違うから!そいつん家に行きたくないのはまた別の話であって、決まった相手とかそう言うのじゃないから!寧ろそいつ男だから!」


「え、あ、そうなの?もしかしてそっち?だから言いにくそうだったんだね…。でも大丈夫だよ、私そう言うの偏見ないから」


「そっちってどっち!?」




可愛い顔してとんでもなく恐ろしいことを言わないでくれ。


想像しただけで鳥肌が立つ。




「違うんだよ見吉さん!俺、本当に彼女とかいなくて!そう言うのもあんまり興味なくて、今はまだ友達と一緒にいる方が楽しいって言うか…っ」


「………彼氏は?」


「断じていないからっ!!」




俺は見吉さんに勘違いされたくない一心で否定した。

必死過ぎて自分でも笑えるけど、見吉さんにだけは誤解されたくなかった。




「………ふ、ふっ、し、し、柴ケンに彼氏とか、ヤバい、面白過ぎ!ユッキー最高なんだけど!お腹痛い!ヤバい笑い死ぬぅうう!!あはははっ!!」


「サーヤ、テメー…!!」




てか、何でそんながっかりした顔してんのさ見吉さん!?




「うふふ、柴ケンってばムキになり過ぎ」


「なり過ぎー(笑)」


「かっわいー!」


「………煩ぇ」




ムキにもなるわ。


よりによって見吉さんの前で誤解されるようなこと言いやがって。


しかもあろうことか本人にはホモ認定されるし、ああもう最悪だ。




「あーあ、本当に参ってるみたいだね」




見吉さんにホモ認定されたことがあまりにもショックでテーブルに項垂れると、頭上から憐れむ声が降って来た。




「こう言う時に一人暮らしだと大変だね」


「柴ケンとサーヤ以外は皆実家暮らしだもんね」


「……そう思うなら誰か助けてくれよ」




ポツリと漏らした独り言。


不満と冗談とほんの少しの本音が混ざったそれを彼女は聞き逃さなかった。






「なら、私の家に来る?」


「………え?」






あまりの内容に思わずテーブルから顔を上げた。

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