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「か、れし、じゃないんだ…?」


「彼氏なんていないよ。柴田くんも知ってるでしょう」




……いや、知らないけど。




彼女と仲良くなってからそんな話は一度も聞いたことがない。

と言うより、俺自身がそう言う話題にあえて触れないようにしていた。

何故なら彼女の口から「彼氏がいる」なんて聞かされた日には絶対立ち直れないと分かっていたからだ。




チラッと、彼女の顔を盗み見る。




艶のある綺麗な黒髪。

透き通った白い肌に大きな黒色の瞳、そして少し厚みのあるピンクの唇。

つまり何が言いたいかと言うと、非の打ち所がない大変な美貌の持ち主ってことだ。

しかも成績も常に上位で教授達からの信頼も厚く、入学して間もなく付いたあだ名が“法学部のクイーン”。




「…ん?どうしたの柴田くん?」




ふと彼女と目が合った。

不思議なことに、綺麗系な彼女が優しく口角を上げると、何故か可愛く見えてしまう。




「えっ、あ、その……何か安心しちゃって…」


「安心?」


「い、いやいやいやっ!こっちの話!気にしないで!」


「そう…?」




彼女の名前は、見吉雪緒みよしゆきお


彼女こそが誰もが憧れる完全無欠のクイーン女王




いや、女神だ。

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