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第13話
本当にうまくいくのだろうか?秀雄は不安に思っていた。相手は犯罪を犯そうとしている人間なのだ。放火を邪魔されて仕返しされたりはしないだろうか?もし美紀が仕返しの標的になったら、と心配にもなる。それに今回は防げたとしても、また別の場所で犯人が同じ事を繰り返すかもしれない。
しかし、目の前で犯罪が起きようとしているなら、それを放っておく事など、秀雄にはできない相談だった。
今夜は美紀の家に泊まって、寝ずの番をする予定になっている。
「秀雄、何これ?」
美紀が拍子抜けしたように声を上げる。秀雄が準備してきたリュックを見ているのだ。
「ロウソクにあんぱん、ミネラルウォーター。本当にメガホン持ってきたんだぁ。」
「メガホンは小さいのにしたよ。」
秀雄は得意顔で言った。美紀はおかしくてたまらない。
現在時刻は18時。
2人が夜に備えて仮眠などするはずもなく、秀雄は漫画に熱中し、美紀は秀雄に一方的に話し掛けていた。いつものように秀雄がタイミングよく 「うん、うん」 「それで?」 などと返事をする。
夕食は美紀の家でご馳走になり、夜10時過ぎ…。
「美紀、電気消そう。犯人からこっちが見えるかもしれないから。」
「うん。」
慌てて美紀がスイッチを押す。これからはカーテンの隙間から見張りをすることになる。
この辺りは街灯が少ない。今晩は月夜でもないので、美紀の部屋は真っ暗に近い。
「秀雄。」
美紀が思わず名前を呼んだ。いつもの明るい声とは違う声。美紀もやはり女の子なのだ。
「こっちこっち。」
秀雄が窓から外を覗いたまま美紀を呼んだ。
「何か見える?」
「少し目が慣れてきたよ。何人かゴミを出しに来た。」
美紀がゴミステーションに目を移した。まだ目が慣れていなくて、ハッキリとは見えない。
美紀の部屋の窓はあまり大きくないので、必然と秀雄の近くに顔を寄せることになる。
こんなに近くで秀雄を見るのは初めてだ。“暗がりは人との距離を縮める”と聞いたことがあるが、それにしても近い。息遣いまで聞こえてきそうな距離だ。真剣に窓の外を見張っている秀雄の姿に逞しさを感じていた。
始めは退屈な時間になると美紀は思っていたが、今は 「もう少しこの時間が続けばいいのに」 と考えている。
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