第12話
「何か手掛かり、手掛かり…。」
秀雄は貧乏揺すりを始めた。真剣に考え事をする時の癖だ。
「時計とか、何か見えなかった?」
この質問は無茶である。住宅街に面した通りには、普通は時計など無い。
「あの人は腕時計を着けてたけど…文字盤までは見えなかったし…。」
「放火されるのは分かっているのに、いつの事だかわからないなんて…。
そうだ!お母さんに言って…。」
美紀はこう言いかけたが、説明のしようがないことに気付いた。信じてもらえたところで、日時が分からないのだからオロオロする人間が1人増えるだけなのだ。
警察は論外だった。 「近いうちに放火魔がやってくるのが見えました。」 などと話をしても、信じてもらえるとは思えない。
「ゴミ出し禁止にしちゃう?」
「無理だよ…まてよ、ゴミだ!
美紀、可燃ゴミの日はいつ?」
「え?どういうこと?」
「ゴミの袋が白色だったんだよ!あれって可燃ゴミ専用の袋だよね。そして犯人は懐中電灯を持っていたということは…。
可燃ゴミを前の日の晩に出す人がいて、夜中になってからそのゴミに火を点けるっていうことじゃないかな!」
「そうだ!秀雄凄い!
可燃ゴミは昨日収集したばかりだから…次は土曜の朝。ということは…。」
秀雄が続けた。
「金曜日の夜中!」
「今度の金曜日でいいのかな?」
「今まで見えたのが全部一週間以内に現実になってるから、間違いないと思う。」
「じゃ、どうやって…。」
ここで2人は黙ってしまった。これから放火魔がやって来ることが分かっていても、そいつを捕まえられるかと言うと、そうではないのだ。2人ともまだ高校生。美紀の少林寺をアテにしたいが、相手はどんな武器を持っているのかが分からない。
結局この窓から見えることに間違いはないのだから、金曜日の夜中に見張って、火を点ける直前に、大声で叫び声を上げようということで落ち着いた。
「じゃ、僕メガホン持って来る。」
美紀は“メガホン”がツボに入ったらしく、大笑いを始めた。つられて秀雄も笑う…。
決戦の日まであと4日…。
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