エピローグ
第15話
ロスタイム、なくした時間。
これは、僕の時間ではない。
僕を愛してくれた人たちの時間だ。
大切に育ててくれた両親の時間。
話を聞いて笑ってくれた友達の時間。
僕がなくしたのは僕の時間だけではなかった。
今僕の死を悲しんでいる時間は、ホントなら楽しくて笑ってた時間だったかもしれない。
好きなことに夢中になって一生懸命活動してた時間だったかもしれない。
そんなホントならあるはずだった時間を僕が奪ってしまったんだ。
もう年をとることのない僕の写真を見つめて、母は何を思うのだろうか。
落ち込み取り乱す母をみて、父は何を思うのだろうか。
僕の兄弟は、明日のご飯の話も、遠足の話もできなくなるのかな。
ずっと、寂しい思いを我慢して母を独り占めすることもできなくなるのかな。
僕の話と、僕がいた頃の家族の話。楽しかった思い出。
そんな話をできるようになるのは何年後?
僕は、あと何年みんなの時間を奪うのかな。
もう取り返しのつかないところまで来てしまった。
生きてるうちに気づくべきだった。
人にはいろんな考え方がある。
自殺は絶対にだめだと言う人もいれば、そうじゃない人もいる。
生きる権利があるのなら、当然死ぬ権利だってあるはずだ、と。
だけど、覚えておいてほしい。
ロスタイムは絶対に発生する。
なくすのはあなたの時間じゃない。
あなたの大切な人の時間だ。かけがえのない生きている時間。
大切にしてくれる人なんかいない って、君はまだそんなことを言うのかい?
じゃあ聞くが、君は誰かを大切にしてきた?
誰かに好かれたいと思うなら、まずは自分が誰かを好きにならなきゃいけない。
自分の好きや、誰かの好きに気付ける人にならなきゃいけない。
大丈夫。ちゃんとみれば見つかるはずだよ。
それを探しに行っといで。
君はまだ生きてるんだから。
END
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