第10話

◯病院(昼)(回想)


父「いいから早く!早く帰ってこい!」


 電話を切る葉月。


ゆ「お父さん?」


父「ゆづき、どうした?」


ゆ「お姉ちゃんのこと怒らないであげて。悪いのはゆづなの。お母さんにお菓子食べたいってわがまま言ったから。」


 涙を目一杯に溜めているゆづき。


ゆ「お姉ちゃん、いつもゆづにお菓子作ってくれてるの。お母さんに習ったんだよって。すごくすごく美味しいやつ。お姉ちゃんがね、お母さんが作るともっと美味しいって言っててね、元気になったら作ってもらおうねって」


 父、ゆづきを抱きしめる。


 それでも一生懸命喋ろうとするゆづき。


ゆ「お姉ちゃんね、いつもがまんしてるの。ゆづとかお母さんのために。お父さんは仕事忙しいからって。本当はしたいことたくさんあるのにね、それなのにね…。」


父「もういい。わかった。わかったから。」


 父、ゆづきの頭を撫でる。


 ゆづき、喋るのをやめて泣く。


 夕方になる。


 ゆづき、寝てしまう。




◯病院(夜)(回想)


 ゆづき、寝ている。


葉「ゆづき…。」


静寂。




◯病室(回想)


心電図のアラームの音。


動き回る医者達。


やがて心電図の音がやむ。


お母さん、亡くなる。


葉月、泣いている。

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