第9話

◯田んぼ道(夜)(回想)


月が雲に隠れ、暗い。


自転車のライトをつけ、急いで自転車をこぐ葉月。




◯病院(夜)(回想)


葉月、病院のベンチに座っている父と妹(ゆづき)を見つける。


急いで駆け寄る。


葉「お父さん!お母さんは⁉︎」


父「今は落ち着いて寝ている。」


葉「お母さん…、何があったの?」


父「ゆづきが昼にお菓子が食べたいとぐずったから母さんがお菓子を作ってあげようとして、包丁で手を切ったんだ。そこから菌に感染したみたいで、夕方になって高熱を出して倒れた…。」


泣き腫らした顔で寝ている妹(ゆづき)。


葉「私が作ってあげなかったから…。」




◯葉月の家(回想)


ゆ「お姉ちゃん!お菓子食べたい!いつものケーキにチョコが入ってるやつ!」


葉「毎日食べてよく飽きないね〜。」


ゆ「えへへ、だってゆづ、お姉ちゃんの作るお菓子大好きなんだもん!」


葉「ふふ、ありがとう。これはね、お母さんがまだ元気だった時に教わったんだ。お母さんのは、お姉ちゃんのより何倍もおいしいよ〜。」


ゆ「へー!いいなぁ、ゆづもお母さんのお菓子食べてみたい!」


葉「お母さんが元気になったら作ってもらおうね〜。」


ゆ「うん!」




◯病院(夜)(回想)


葉「…。」


父「葉月、何で誰にも言わず東京になんか行ったんだ?」


葉「…オーディションがあったの…。」


父「オーディション?」


葉「うん…。アイドルになりたくて…。」


父「アイドル…か。」


葉「ごめんなさい…。勝手なことして。」


父「子どもだけで行くのは危険だ。どうしてもの時はちゃんと相談しなさい。」


葉「…。」


父「できるだけ力になるから。」


葉「ぇ?」


父「葉月がやりたいことなら応援するし、協力だってするよ。いつもお母さんのことよく見てくれてるしな。…そっか、葉月はアイドルになりたかったのか…。」


葉「うん。」


父「お父さん、母さんのこと葉月に任せすぎてたな…。ごめん。」


葉「ううん。」


父「ゆづきから聞いたぞ。毎日ゆづきにお菓子作ってあげてたんだってな。」

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