ひなのうたげ あとのまつり

山樫 梢

ひなのうたげ あとのまつり

 とりのひなたちがかよ雛鳥園ひなどりえん参観日さんかんび

 凛々りりしいタカ。綺麗きれいなインコ。可愛かわいいペンギン。たくましいダチョウ。知的ちてきなフクロウ。うるわしいハクチョウ。美声びせいのホトトギス。荘厳そうごんなるクジャク……。

 とりどりの親鳥おやどりまえにしてショックをけたのは、ニワトリのひなたちです。

 かれらにくらべたら、ニワトリなんて地味じみすぎる!

 けようのない成鳥姿せいちょうすがたたりにして、ニワトリのひなたちはしょんぼりとおうちかえりました。


 まれたときから将来しょうらいまっているなんて希望きぼうがありません。どうにかくつがえせないものでしょうか?

「そうだ!」

 一羽いちわのひながひらめきます。

「トリのかみさまをよびだして、おねがいしてみようよ!」

 それは名案めいあんだと、みんなすぐさま共鳴きょうめいしました。


 ひなたちは慎重しんちょう準備じゅんびすすめます。

 親鳥おやどりのいぬ見計みはからって、いざ決行けっこう

 神鳥様しんちょうさままつるひなのうたげ、ひなまつりの開宴かいえんです。


 穀物こくもつ青菜あおな、ミミズ……べちゃいたい気持きもちはぐっとがまん。各々おのおの用意よういしたごはんを供物くもつとしてげ、こころをひとつにしていのりとおどりをささげると――ひなたちの懸命けんめいねがいがつうじ、神鳥様しんちょうさまりました。

 後光ごこうすシルエット。神々こうごうしいたたずまいにおさないひなたちも自然しぜん平伏ひれふします。


「して、そなたらののぞみは?」

「ぼくたちニワトリになりたくないんです!」

「おおきくなったら、ちがうトリにしてくださいっ」

「……それは何故なにゆえだ?」


 ひなたちはぴいぴいと口々くちぐちにニワトリの欠点けってんうったえます。

 はじめはだまっていていた神様かみさまですが、ほどなくくちばしはさみました。


「もう結構ケッコウ!」


 けんのある一喝いっかつに、ひなたちはつぶらなひとみをぱちくりさせます。

「そうもにわとりわぬか?」

 不服ふふくそうなこえとも後光ごこううすれ、ご開帳かいちょうしてあらわになった神様かみさま姿すがたは――しろはね黄色きいろくちばしあか鶏冠とさか

 見覚みおぼえがあるどころではありません。

 なんと、ひなたちがした神鳥様しんちょうさまは、ニワトリの神様かみさまだったのです。


 まさかまさかのニワトリの降臨こうりん黄色きいろいひなたちはとりみだしてさおになりました。

 くちばしそろえて悪口わるぐちわれつづけた神様かみさまはもうカンカン。かおまで鶏冠とさかのようにになっています。

 ぴぃぴぃいてあやまってもあとまつり。ひなたちのねがいはけんもほろろに却下きゃっかされ、神鳥様しんちょうさまのお説教せっきょう小夜啼鳥さよなきどり時間じかんまでつづいたのでした。

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ひなのうたげ あとのまつり 山樫 梢 @bergeiche

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