誰か私の名前を変えてくれ

夏空蝉丸

第1話

 DQNネーム。それは、一般的ではない変わった名前のことだ。大名家に伝わるx宗とか、そんな歴史的な名前はDQNネームとは呼ばない。変わった名前、特に漢字と読み方が全然あっていないようなものを示す。


 望まない名前を与えられた子供として、そんな名前をつけるのは止めてほしい。本当にやめてほしいんだ。


 というのも、私の苗字は、比奈ひなで、名前が茉莉まつりなのだ。要するに、「ひなまつり」である。勘弁してよ。うちの親。DQNネームとまでは言えないかもしれないが、完璧にネタで名づけられた名前だ。


 ええ、そうだ。私の誕生日は、三月三日だ。親曰く、生まれそうになったのを我慢するのが大変だったんだから。とのこと。


 いやいや、そんなの知らないから。私が望んだことじゃないし。単に、子供にひなまつりって名づけたかった。それだけのために、そんな、気合入れることじゃないんだって。


「茉莉って名前、可愛いよね。あんまりいないから覚えやすいし」


 そう言ってくれる友達もいるし、茉莉自体は悪くはない。けど、男子にはいじられてイラっと来ることもあるし、それより何より、親だ。特に母親。


「今日も楽しいわねひなまつり」


 って、五月五日にいうのは止めてほしい。つか、止めろこら。


「えー、いいじゃない。一年中、幸せじゃないひな祭りで」

「いや、それじゃ、私、馬鹿みたいじゃない」

「踊る阿呆に見る阿呆、ならば踊らにゃソンソンって言うじゃない」

「私は阿波踊りじゃないっての」


 母親と話をしても埒があかない。怒るだけ無駄ってもんだ。私は自分を落ち着かせようとする。でも、母親はそんな私の安寧さえも許そうとはしない。


「そうね、踊りがあるからって同じ祭りにしちゃ良くないわよね」

「論点が違うって」

「いいじゃない。一生ひな祭りで」

「結婚するなってこと?」


 私が文句を言うと、母親はポンと手をたたく。


「クリスさんと結婚したら? そうしたら、ひな祭りじゃなくなるわよ」

「どうして?」

「クリスマスツリーになるじゃない」

「ならないって! クリスマツリじゃない。それに、クリスは名前だって。苗字じゃないでしょ」

「そっか、でもいいんじゃない? クリス=タシロとかかもしれないし」

「いい加減にしてよ」


 私は拳をフルフルとさせながら文句を言う。絶対にさっさと結婚してやる。母親と名前の話になるたびにそう、強く決心するのであった。


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