理想論
@Kayaamata
第1話
思い通りにならない人生。それは何の変哲もない、ありふれた人生。そして、ありふれた絶望。
「別れよう。」
突然だった。いや、本当は分かっていた。最近ずっと避けられていた。考えないようにしていたのに。
「私は別れたくない。理由を聞かせてほしい。」
「もっと信用してほしかった。もっと自分のことを見てほしかった。でも君は違った。俺のことを信用するわけでも、大切にしてくれたわけでもない。これ以上付き合っても苦しいだけだ。」
「そっか。まず、ごめんなさい。あなたのことを考えられていなかった。虫が良すぎる話なのは分かってるけど、私はまだあなたと付き合っていたい。嫌ならもう別れよう。これ以上あなたを傷つけたくない。」
いつからだろう。こんなに冷めたようにしか話せなくなったのは。これまでもきっと、手を伸ばし続ければ掴めたものもあったはずだ。でも私は、全部諦めてきた。目標も、夢も、愛も、全部。こんな私でも好きと言ってくれた彼のことを、私を裏切った。罪悪感がさらに胸の中を曇らせる。「変わりたい」なんて何度も何度も願った。でも、変わりたいなんて一言で変われるほど人間は、いや、私は強くない。
「そう。じゃあ別れよう。さようなら。」
そう言い残した彼の声には、もう以前のような温かみはない。その声に思わず涙が溢れそうになる。これでいいのだ。これ以上私の希望に縋っても、私と彼が傷付くだけだ。彼には幸せになってほしい。闇に堕ちるのは、私独りだけでいい。
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