第104話

試食したときはとてもクリームが多くて甘さが協調されていたのに、今食べているのはそれがない。それどころか甘すぎずとても食べやすい味に仕上がっている。


「この菓子を……以前どこかで食した事があるのですか?」


 不思議に思った店の男がイトカに問い掛ける。


「えっと……前に1度だけ。あの時より甘さが落ち着いていたので、ちょっとビックリしました」


 何気なく答えるイトカに初めこそ驚いた様子だったが、『そうなんですね』とまた爽やかに微笑んだ。


「貴方がこのお店の職人さんです?」

「……いえ。私はただの見習いですよ」


 恐縮そうに答える男にさほど疑う事もなく『確かに若そうだもんな』と勝手に納得していた。


「ご馳走様でした。また買いにきますね」

「はい、ぜひ。お待ちしております」


 他に幾つか購入し一礼する彼に軽く会釈をすると、挨拶まわりだったにもかかわらず婚約している事も告げず、お土産に喜びながら帰還。


 後日、そんな”見習い和菓子職人”と思い掛けない場所で再会を果たす―――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る