*それぞれが告げる想い

第75話

納得がいかないイトカ。


「シバ社長! どうするんです!?」

「……うるさい。たいした話ではない」


 社長室に戻り本人に問い詰めるものの、いつもと変わらぬ面持ちとあまりに薄い反応で、まるで他人事。


「全然たいした事あるじゃないですか! あのキモイ男に会社を乗っ取られるかもしれないんですよ!?」

「だから口の利き方に――」

「何を呑気なッ そんな事になってもいいんですか!?」


 冷静沈着すぎる社長にイトカは捲し立てるも反論する事もなく、デスクの上で指を組んだまま黙っている。


「……私がこの街から出て行けば問題は解決しますか?」

「何を言い出す」


 予期せぬイトカの提案に不機嫌な表情で社長は反応。


「私が足枷になっているのであればすぐにでも出て行きます。婚約を破棄してください」


 イトカの真剣な眼に『まさか……』と察する。


「お前……あの人に何を吹き込まれた」

「……いえ、何も」


 社長の問いに視線を外して答えてしまい、見え透いた嘘だとすぐにバレてしまった。

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