第35話

真っ白な大理石の床に壁や柱のないオープンキッチンは、まるで外国の高級ホテル。


 図書館の本棚のような庶民には考えられないレベルの食器棚には、高価な皿やグラスがきちんと整理され並べられていて他にも調味料や調理器具は一切表には出ておらず、すべて棚に収容されている。包丁に至っては数種類もある。

 それだけ揃っていながらもゴミ箱と冷蔵庫には何も入っていない。本当に、何もだ。


「生活感がなさすぎる……何を食べているの、あの社長」


 中身が空っぽの冷蔵庫を見つめがら、ふと考えてしまう。

 この1か月、社長が台所に立っている姿は疎かそもそもこの豪邸で食事をしているところすら見た事がない。

 シェフを雇っている様子もないし、食事は作らなくていいと言われているから彼がどこで何を食べているのか、四六時中一緒にいるワケではないためよく知らないのだ。


「もしや何も食さない怪物だったりして……いや、有り得る」


 ”シバ社長=絶食悪魔”なんて呑気に考えていたが、今はそんな場合ではなく『社長から頼まれていた仕事をしないと』と掃除の手を速めた。

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