第18話

「昨日彼氏と喧嘩したんです。」

教室まであと5分くらいのところで、

急にナツちゃんが告白をしてきた。

ナツちゃんに彼氏がいたこと、喧嘩をしたこと。

膨大な情報量がある一言だった。


「喧嘩の原因はなんだったの?」

そう聞くのが正解だと思った。


「週末に会う約束が会えなくなったっていうので、

 ちょっと意地悪したくなったんです。」

ナツちゃんの見上げる目が僕の目を見る。

一瞬、今、この子は僕の答えに、なにか賭をしたなと分かった。


大人の答えを教えて。ちゃんと。

僕も昔、ハルにこういう顔をしたことがあるから知っている。


「意地悪だったら仲直りできるけど、

 そこに嘘があったら難しくなる。

 意地悪だから大丈夫だよ。」

僕はそういう顔に答えるための言葉を持っている。

ハルが昔、僕に言った言葉だから正解。


少し間があってナツちゃんはハニかんだ。

「少しだけ嘘があるけど、意地悪の方が量が多いので

 大丈夫だと気付きました。」

僕が思ってたよりナツちゃんは大人だった。

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