第16話
家族ぐるみの付き合いが長く続き、
私が進学で東京に住む話をしたら
定期的に顔が見れれば元気か分かると
料理教室に誘って下さった。
教室内ではあきらかに私だけ若くて浮いている。
親戚の子の空気が出ている。
それでも、優しくほどよい距離間を保った教室は
人の品が良く、なんでも美味しい。
月に数回だけ特別な自分になれるような気がして好きになっていった。
通う中で、かならず背広で来る背の高い男性。
きちっとした革の鞄と、汚れを落とした革靴で来る。
アキトさんが気になるようになった。
フユキとは真逆の大人の男の人を感じる。
いつも話しかければ笑顔でゆっくり答えてくれる。
それが大人の余裕なのだとは分かっている。
分かっているけれど、だんだんと私はアキトさんの纏う
柔らかい空気に惹かれていった。
フユキでは得られない感情。
私はそれをアキトさんで埋めていた。
ただし、これを恋と呼ぶことはない。
あくまで「心地よい魔法」までに留めている。
そう、これは水曜日の魔法。
憧れを煮詰めて作ったキャラメルみたいなもの。
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