SIDE A ハルとアキトの場合
第1話
「さっきはごめん」
ポケットの中のスマートフォンに通知画面が光るのでチラッと見る。
掌がぼんやり明るくなる光。
なんだよと思って反射的に端末の右側にあるボタンを押す。
漏れた光は、すっと消え暗闇に戻る。
いつもなら通勤の電車の中で
イヤフォンに飛ばした音楽を聴きながら、
スマートフォンでSNSをダラダラ見て、
漫画を少し読む。
ほとんど満員の混んだ電車の中で
なにも考えない灰色の朝は、毎日無感情だった。
窓からの風景も、多すぎる匂いが混ざった車内特有のあの匂いも、
誰かの塗りすぎたヘアワックスが時々頬にかする感覚も。
それは全部、朝。
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