志望動機

男1「なぜこの仕事を志望したんですか？」

男2「地獄に堕ちたいからです」

男1「は？」

男2「私の親友は人を殺してしまいました。きっと、彼は地獄に堕ちていると思います。だから、私も人を殺さなければいけないんです。そうしなければ、私は彼に会えないんです。だから、死刑執行人になりたいんです」

男1「無差別殺人を起こさずにこの面接に来たあなたの善性は認めましょう。でも、一言言わせてください。あなたは死刑執行人が地獄に堕ちると思っているんですか？」

男2「堕ちます。たとえどんな理由があろうとも人を殺してしまったんですから」

男1「ぼ、僕はこれまで15人もの人の首を切り落としました。でも、やりたくてやったわけじゃないんです。こういう家系でこの仕事しかやらせてもらえなかったんです」

男2「そうだとしても地獄に堕ちます」

男1「そんなのいやだ。地獄になんか堕ちたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない」

男2「そんなに怯えないで下さい。これはあくまで信念の問題なんです。私はどんな理由があったとしても人を殺したら地獄に堕ちると信じている。でもあなたは違いますよね？　だったらそれを強く信じて下さい。私の戯言なんかに耳を傾けないで」

男1「そうすれば僕は地獄に堕ちないで済むんですか？」

男2「断言はできません。これはあくまでささやかな祈りみたいなものですから」