契約一日目
第1話
ゆっくりと自分の体が浮き上がり、天地が逆転する。
車内にはカバンや携帯、ペットボトル、お菓子の袋などたくさんの物が宙を舞っていて、まるで宇宙空間の様だったと思う。
助けを呼ぶ声や悲鳴の中で自分はもう死ぬのだと感じながら、そんなことを思っていた。
…。
死ぬ間際に今までの人生が走馬灯のように思い出されていくと言うけど、私はそうじゃなかった。
私が思い出したのは愛しい彼の顔。
気づくと私はバスから外に投げ出されていて、先ほど聞こえていた叫び声も聞こえてこない。
視界に入ってきたのは好き放題に伸びた草木とどこかで炎上しているバスの煙が見えるだけ。
でも自分の頭から血がどんどん流れていることはなんとなく分かる。
痛みはないけど、もう体が動かなくなってきた。
だんだんと視界もぼやけていき、まぶたも開けていられない。
降りだした雪が冷たく私の頬を濡らしていく。
すごく眠い…誰か…私を起こして…。
眠ってしまったら彼に会いに行けないよ。
約束したのに…これで終わってしまうの…?
そして私は暗闇の向こうに彼の優しい笑顔が見ながら重いまぶたを閉じた。。
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