第5話

「何、寝た訳?」




シャワーを浴び終わった皐月くんが再びリビングに戻って来たらしく


私の踞るソファーの横にすとんと座る。



だけど、すっかり夢の中にいる私はそれに気付かない。




「寝息まで大人しいのか。

こうやって見てると死んでるみたいだな」



なんて失礼な事を呟く彼。




「まあ当たり前か。


コイツ、寝ないで待ってたんだっけ、俺の事。

帰って来るなんて言葉、バカ正直に信じて」




そうして私の髪を掬って、冷たい口調とは正反対の温かい手で弄ぶ。




「あのまま、俺が帰って来なかったら

どうするつもりだった訳?


今もずっと起きてんのかな、お前。

俺が帰って来るまで、ずっとずっと――」




そう一人ごちりながら、私の髪を弄ぶ手は未だ止まらない。

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