第23話
「え、翔様?!早かったですね…」
「合わなかった、それだけだ。」
「そう、ですか。お父様にはなんとお伝えしましょう…?」
「それは俺から言う。…迎えありがとな。」
「…!はい!」
「あ、そうだ。悪いがこのまま父さんのとこまで連れて行ってくれないか。」
「かしこまりました!」
20分ほど車に揺られたあと、目的地に着いた。
2回ノックした後、「失礼します。」と言いながら中に入る。
「翔!見合いを飛び出したそうじゃないか!何やってるんだ!!!!」
「それは父さんが勝手に行かせたんだろ…。」
「そう、だが…。それで?俺に会いに来たのは、理由があってのことだろう?」
「そうだよ。」
そう、それこそ俺がここに来た理由だ。
違う女と話して、よく分かりすぎるほどよく分かった。俺は他の人じゃ駄目だということが。
「父さん。」
「なんだ。」
「俺…今、好きな人がいる。」
「…はぁっ?!お、お前にす、好きな、人??」
「うん。」
「ど、どこのご令嬢だ?」
「だから、そういうのは無理。生理的に受け付けられないんだよ。」
「じゃ、じゃあ、誰だって言うんだ…。」
「喫茶店の店員さん。まだお友達になっただけだし、俺の片思いだけど。」
父は状況が飲み込めないというように頭を抱え、「…ほ、本気なのか?」と苦しそうに声を出した。
「もちろん本気だよ。父さんはよく分かってないけど、俺、本当に母さんと父さん以外の人が嫌いなんだ。だからこれからどんな家の人とお見合いしても絶対結婚しないし会社も継がない。出て行くよ。」
「そ、それは困る!お前が居なくなったら会社が!」
「でしょ?だから、その代わり俺の好きなようにさせて欲しいんだ。もしも、応援してくれるなら会社継げるように頑張るし、もっと努力するよ。表情筋鍛えたりね?」
「…それはそうだが。一般の女性となると、彼女が大変だぞ?そこはどうするつもりだ。」
「守るよ必ず。どんないびりでも、どんなに妬まれようとも、俺が全部跳ね除けてやる。それくらい好きなんだ。初めてだよ、こんな気持ちを抱いたの。」
数秒黙り込み、考え込んで父さんは大きくため息をついた。
「……っ。分かった。もう見合いはさせない。俺だって一人息子のお前は本当に可愛いんだ。
だから無理強いはしたくない。だが…お前が
いつまで経っても結婚しなさそうだったから見合いをさせたんだ。悪かったな…。」
「分かってるよ父さん、優しいもんな。でさ、今度、彼女が働いてる喫茶店まで連れて行くから、父さんの目で確かめて。どんなに素敵な方なのか。」
「ああ、分かった。いつにする?」
「再来週の水曜。彼女のテストが終わってからだ。」
「分かった。予定に入れておくな。」
「うん、ありがとう父さん。またね。」
後ろ手で社長室のドアを閉め、車に戻る。
よっし、第1関門クリア!
正直、父さんを言いくるめられるかは勝負だったが、なんとかなって良かった…。
あとは、彼女とどういう風に向き合っていくかだな。
ああ、再来週が楽しみだ。
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