第13話
『ヒューイ♪』
月の世界からその様子を見つめていたクロウは嬉しそうに笛のような音を上げた。
「理子は幸せを改めて掴んだんだね。キミも嬉しいんだろ、クロウ。」
クロウは抱いていたパンダウサギに頬ずりをして満足気に頷いた。
「けど、君はあんな別れ方で良かったのかい?この世の人間とは縁を切らなければならない掟だったが、あの時ばかりは理子はボクが連れてきたのだから良かったんだよ…?」
タクトは少し心配そうにクロウに訪ねる。
クロウはフッと表情を緩め、ピエロのメイクを解いて理子の叔父の姿で下界の夜景を見ながら呟いた。
「あのままだったら恐らく理子はずっとここにいたいと言いだし兼ねなかったでしょう。この世界は非現実的にして現実な世界。そして、この世の人間は夢としか生きていくことが出来ないのであれば、夢として楽しんでくれればそれでいいんです。ボクに心残りはありません。あなたはまたもや私にそして理子に素敵なプレゼントをくれました。ボクは、アナタに弟子入りして大正解でした。」
ニッコリと微笑んで振り返った理子の叔父はタクトと呼んでいた人物を見つめた。
叔父の視線の先にいたのは銀髪のタキシードの美少年ではなく、
白いヒゲと赤い帽子、赤と白のトレードマークの子どもたちにプレゼントを配る老人。
そしてクロウが抱いていたパンダウサギは、トナカイに姿を変えていた。
「理子はとってもいい子じゃな。彼女は絶対幸せになる。ワシが言うから間違いない。
いつも世話になってる弟子にほんのプレゼントじゃ。」と嬉しそうに目を細める。
理子の叔父とサンタクロースと称される人物は互いに微笑み合い、
今日もたくさんの子どもたちに夢という名の、プレゼントを配るのである。
理子の叔父は愛しい姪に届くように下界に向かって呟いた。
『…メリークリスマス。理子。』
end
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます