第24話

いつものように絵を描く時だけゴムで纏められている俺の前髪を、つんつんと上に引っ張る彼女に視線を向けるだけでいつものように返事をしないでいると、彼女はむっと表情を変えた。




「祐人のその返事をしないところ直した方がいいんじゃない?私だからいいものの、他の子にもそんなんだったら嫌われちゃうよ」




未だに前髪を引っ張り、そして眉間に皺を寄せて旭奈は言った。



別に旭奈に嫌われなければどんな女に嫌われても構わない。


旭奈が返事をしないことが嫌で直せと言っているのならすぐにでも直すが、きっとそんなことは気にしていないだろう。


嫌ならもっと早くから言っているはずだ。



すると、前髪が後ろへ少し垂れ下がるのが分かった。




「ねぇ、見てもいい?」




俺の前髪から手を離した旭奈は訊くが、俺はやはり返事をしない。

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